なぜ、日本に大きな薬害が集中的に起きるのだろうか。少なくとも欧米では日
本のように薬害事件が頻繁には起きていない。確かに、これまで記してきたよ
うに日本では医薬分業が徹底していない、インフォームど・コンセプトをして
いない、多くの薬剤を投与すると薬価差のために収入が上がるといった環境が
あることはすでに指摘してきた。
このように環境を早急に改善しなければならないのはいうまでもない。しかし、
薬が新薬として認可され、販売されるための最終関門こそもっとも重要である。
つまり、どういうメカニズムで医薬品が承認され、そこに問題がないのかとい
う点がある。新薬開発と承認審査のプロセスは次項の図のようになっている。
プロセスを簡単に述べると、製薬会社は研究所などで新しい物質をいくつもつ
くってみる。それらの中から簡単な動物実験で有効なものをスクリーニング
(ふるいわけ)する。スクリーニングされた物質の性状、構造を調べる(この
間2〜3年かかる)。
こうして可能性のある物質を見つけると、この物質を動物実験で詳しく調べる。
主として毒性や有害性はないか。体内でどのように吸収され、体外に排出され
るか、効果の量、催奇性や発癌性などを実施する(この間3〜5年)。これら
の「動物での前臨床実験」をクリアして、その物質に新薬としての可能性が高
いとみた場合、厚生省に治験届を出す。(この間3〜5年かかる。)