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現在の電気事業界の仕組みについて

 電気事業には大きく分けて、発電業務、送電業務、配電業務の3つの業務がある。 この3つの業務をその地域の電力会社が全て執り行っており、また日本を10の地域 に分け、それぞれの地域内の電気事業を東京電力、関西電力、中部電力、九州電力 、東北電力、中国電力、四国電力、北海道電力、北陸電力、沖縄電力の10社が運営 している。それぞれの供給区域は電気事業法18条により、通産省によって定められ ている。 これらのような業務を行う会社を一般電気事業者と呼ぶ。これとは別に、 発電業務のみを行う業者が、卸電気事業者である。この会社は電力を生み出し(発 電)、それを複数、若しくはひとつの一般電気事業者に販売している。一般電気事 業者は電気を買い取った後、安全に民間に供給できるように何らかの調整をし、一 般電気事業者が発電した電気と一緒に外に向けて送電している。
 近年、毎年加速度的に伸びる電力の需要、一般電気事業者の所有する発電所の力 不足により、需要量に対する発電量の不足が深刻化している。卸電気事業者は、限 界にきている一般電気事業者の発電業務を補う性格を持っている。ただしその発電 量は一般電気事業者に比べごく少量であるが、民間の企業ならではの特性を生かし て、大抵の場合においてコストが安く、一般電気事業者が、自分で作るよりも卸電 気事業者から電力を買った方が安くあがるという状況も出てきている。
 卸電気事業者は、発電することを専門とした会社であったり、大きなグループ企 業の中で余った電力を一般電気事業者に売るために作られた会社であったりするが 、誰でも卸電気事業者になれるわけではない。電気事業は民営化されたとはいえ国 民にとって不可欠な公共事業であるし、それだけに一定の安定性と安全性の水準を 求められる。そのため、不安定であったり危険な電力が供給されることを防ぐとい う目的で、通産省が、一般の企業が卸電気事業者になる際の参入規制を設けている。 こうすることにより、より安全な電力が一般電気事業者に渡るわけだが、逆に経済 活動の競争原理を妨げるという観点から、1996年1月の電気事業法改正により参入 規制の撤廃が決まっており、法改正後は一般企業の卸電気事業への自由参入が可能 になる。これにより、電気事業の発・送・配電業務のうち、発電業務は(完全では ないが)自由化がされることになる。
 さて、このように消費者が電気事業者から電気を買って使用する電気利用形態の 他に、消費者が自ら電気を発電し使用する形態、いわゆる自家発電という形態があ る。これは文字通り消費者が発電設備を自分の所有する敷地内に建設し、そこで発 電した電気を利用するものである。このように、一般電気事業者から電気を買わず に自家発電する際のメリットとして以下の点が挙げられる。

 このように、一般電気事業者から電気を買うよりも安いコストで電気を得ること ができる。大きな企業、特に電気を多量に消費する企業の場合、歳出の中で電気使 用量が大きく占めているため、一般電気事業者から電気を買うととても高くつくた めに自家発電している企業がほとんどである。ただ、電気使用量の100%を自家発電 しているわけではなく、大抵の企業が使用量の約6割〜9割を自家発電し、残りは一 般電気事業者から買っている。
 余談ではあるが、電気に関する規制緩和を進め、電気料金が下がった場合に一番 得をするのは大量に電気をする大きな企業であるが、先に述べたようにそのような 企業は自家発電で電気をまかなっている場合が多く、よって一般電気事業者による 電気事業、料金制度に関心がない場合がほとんどである。このことが電気事業に関 する規制の緩和が進まない原因のひとつでもある。
企業によっては、自家発電によって生み出された電気を使い切れず、また捨てて しまうケースも出てきている。その企業にとっては使用する電気量を全て発電し、 まかなっているため何の問題もないが、大きな視点で見ると電気を捨ててしまうこ とは無駄なことである。通産省はそうした、いわば眠った電気を他者のために活用 できないかと模索しているところである。
 上記のような、一般電気事業者による電気利用形態、自家発電による電気利用形 態の他に、第三の利用形態として特定供給というものがある。これは自家発電形態 が発達したようなもので、自家発電の場合は同一の敷地内や、同じ企業、工場内で 行われるが、特定供給は、二者間で、一般電気事業者を介さない形で電気を売買す るものである。たとえばA者は電気を余らせていて、B者は電気を欲しがっている 場合、二者間の合意が得られれば一般電気事業者を通さなくても電気の売買を認め るものである。そして、この場合のA者を特定電気事業者という。また、一般電気 事業者との違いは、供給先が地域ではなく地点である。
 ただし特定供給には様々な規制があって、自家発電を行う場合は同一の敷地内で あれば許可は必要ないが、特定供給の場合は供給相手ごとに通産省の許可を得なけ ればいけない。また、この二者間は、ある一定の距離以上は離れていてはいけない。 要するに、近場同士でなければならない。また、複数以上に電気を売ることはでき ず、買い手と売り手は一対一でなければならない。
 現在行われている特定供給は、 上記の例などが挙げられる。

 以上の三形態が、1995年7月現在の、主な電気利用形態である。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997