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”規制”が果たしてきた役割

日本では中世の座、江戸時代の株仲間、明治時代の政商など商業や産業は多くの場合, 時の権力者と結びつき独占的な利益を享受してきていて、現在でも官主導の「仕切られた競争が残っている。一方、ヨーロッパでは、政治的民主主義を経済の領域にも適用しようとする「マーケット・メカニズム」という概念が市民革命を経てもたらされた。民主主義が投票によって多数意見を集約するように、経済において消費者の多くが好ましいと思う財やサービスに消費者のマネーが集まる一方、消費者にとって不必要なものにはマネーが集まらないため、その供給者は撤退しなければならないという仕組みである。このとき、重要なのは、消費者にとって選択肢が多いことである。つまり、規制が多くあるために様々なものが供給されていなければ消費者の本当の好みが分からないからだ。

ただし、規制が有効なときもある。一国経済が「キャッチアップ」の段階にあるときは政府が先進国の経験から適切な目標を設定し効率よく先進国を追いかけるように産業を始めとする種々の規制を敷くのがふつうだからだ。

しかし、世界の先頭に立って新しいアイデアや技術を創造していかなければそれ以上の経済発展が困難な国では(最近の日本やアメリカ)、企業や個人が自由な発想で新機軸に挑戦していくことが求められる。

日本経済が行きづまっているのは日本経済がキャッチアップを終えたのにも関わらず、まだその体制を引きずっているからだ。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997