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ある規制緩和反対論者の主張

「皆さん!規制緩和という美名にだまされてはいけない。大体,今まで日本は このような規制があっても立派に経済成長を続けてきたではないか。 下手に規制緩和を推進すれば,社会に悪影響が出るだけである。」

「まず第1に,規制緩和が行われれば,これまで規制によって守られてきた 弱者が犠牲になるではないか。自由競争のもとでは,結局強い企業が中小の 企業を圧迫し,倒産が増えるだけである。倒産が増えれば失業者が 街にあふれ,終身雇用制が崩壊し社会不安が引き起こされるではないか。 規制緩和で,一番雇用の面で悪影響を受けるのは中高年の中産階級である。 彼らが失業すれば,たとえ運よく新しい職を得たとしてもマクドナルドの店員ぐらいの もので,所得はむしろ低下するであろう。また,そのまま競争が進めば結果的には 市場は大企業の寡占状態になり,消費者の利益がないがしろにされるだろう。むしろ, 規制によって大企業と零細企業との共存(業界秩序の維持)を図った方が みんな幸せになれるではないか。」

「第2に,規制緩和によって公共性・安全性が犠牲になる。所詮企業は自分の利益しか 考えない存在であり,完全な市場原理に任せたら,企業は儲けにならない 『公共性や安全性の追求』をやめるに決まっている。そうしたら最終的に損をするのは ,飛行機便だけが頼りの離島に住んでいる人々や,整備が不十分のために 墜落してしまった飛行機に乗っている人々ではないか。規制緩和賛成論者は このような時に『自己責任原則』を持ち出すが, いったん事件や事故が起こってしまえばもう遅いではないか。それよりも, 行政が予め規制を設けて事件・事故を予防した方がいい。どうせ事件や事故が 起これば,マスコミは『行政の監督責任』を追求するのだから・・・・。」

「第3は,安定性の問題である。市場で自由競争に任せっきりにしておけば, 過当競争や寡占で価格が上下したり供給量が不安定になって最後には消費者が そのつけを払わなくてはならなくなる。それなら,少々コストが高くついても 『安定供給』を維持することが生産者も消費者も利益を得ることになるのだ。」

「最後に言っておきたいのは,規制緩和の行き着く先はアメリカ型の社会である ということだ。アメリカのような個人主義的で自由競争を重んじる社会では, 規制緩和で倒産や失業が出てもその衝撃に耐えられるかもしれないが,日本の 社会風土には合わない。結局規制緩和のボ−ダ−ラインはそれぞれの社会に合わせて 引くものであり,無理にアメリカ型の社会にする必要はない。」

「・・・・さて,これまでの私の主張で規制緩和をむやみに進めることの 愚かしさを十分に分かっていただけただろうか。マスコミの規制緩和礼賛に 惑わされることなく,自分で判断してもらいたいものである。」

これは,私が書いた架空の規制緩和反対論である。キ−ワ−ドとしては 「安全」「雇用」「安定供給」ぐらいだろうか。また,よくある議論としては 「社会的規制」の緩和に対する批判がある。経済的自由と社会的規制とが 対立する分野では,社会的規制を優先させるべきだというのだ。 消費者団体がよくこの議論を持ち出す事が多い。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997