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文書作成者の意識の変化

今後情報公開法が制定されると、原則公開の名のもとに次から次と情報が公開されていくことになる。そのなかには当然情報を公開する行政側にとって不利な情報も含まれることになろう。そのとき、行政側は自らが文書を作成する立場にあるために自分に不利な情報は文書を作成する時に削除したり、その情報を都合の良いものに加工する権限すら持っている。そういったことが実際に起きないようにするためにはどうすればよいのだろうか。

文書を作成する当事者が問題になるような場合、対策として、まずは第三者の公平な視点からのチェックが考えられる。しかし、第三者に文書の作成過程のチェックをさせるということはその人にすべての情報を公開することになり、結局非公開にすべきものまで公開してしまうことになる。このことを考えると第三者による文書のチェックというものは実際に行なっていくのが困難であると考えられる。(アメリカの情報自由法では、その情報が公開か非公開か裁判で争われたとき(逆情報自由法訴訟)、裁判官がその情報をみて、公開か非公開とするか判決を下す仕組みになっている)

次に考えられるのは公開される文書がある調査に基づいているような場合にその情報の出所を書き示す、というものである。そうすれば文書に書いてある情報がたとえ加工されたものであったとしても、それを探ることによって正しい情報を知ることができるかもしれない。ただしこの方法にはいくつかの問題点がある。

第一にその情報が犯罪の捜査に関わる場合である。犯罪の捜査の場合、情報源を示してしまうと情報提供者がその情報によって不利益を被った犯罪者によって危険に晒されるおそれがある。そうすると情報提供者は当然そのような情報はださなくなるだろう。このように情報の出所をあきらかにすると情報提供者に不利益を与えるような場合にはその名前を匿名にするなどの配慮が必要になってくるのではないか。

第二にその情報が企業による研究によるもののような時である。ある情報が企業などの私的な機関から出てきたような場合、研究の報告はできてもその方法などは企業秘密に属する、といったこともかんがえられる。そのような時には情報の出所は明かせても実際にその情報が加工されていないかといったことを確かめるのは困難である。そうした時にどうしていくかということはさらに細かい規定が必要になってくると思われる。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997