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日本のガソリンスタンドの現状

始めに、簡単に日本のガソリンの流れについて説明することにする。取り引 きの流れについていえば、日本のほとんどのサービスステーション(以下SS) は独立経営であり、元売り会社で、一般に流通業者は配送機能を持っていない。 (図2)ガソリンの流通業者は、全国に32000件あるが、全体の75%は SSを一ヶ所しか経営していない中小零細企業である。また、元売り会社のガソ リン販売シェアについてみてみると、日石、出光の上位2社で約三割、昭和シェ ル石油、コスモ石油、ジャパンエナジーを加えた上位5社で3分の2を占める。 元売り会社の系列SSもガソリン販売シェアにほぼ比例する。

以上が日本のガソリンについての内訳であるが、最近は、各元売り業者系の SSが、テレビ、ラジオでしきりとコマーシャルを流し、サービスステーション という名の通り、「サービス」を宣伝している。わが国では、ガソリン=摘発 油という危険物の貯蔵と販売を行なうという理由で制限されていた、業務範囲 と上階用途の規制が緩和されたため、最近のサービスステーションは、買物が できたりと非常に便利である。1975年に制定された揮発油販売業法の規制 緩和について振り返ってみる。ガソリンの脱税を目的に、灯油を混ぜたガソリ ン販売業者がいたため、エンスとが相次ぎ、社会問題となった。品質確保のた めに、すべての業者は登録性が義務づけられ、スタンドの新規建設を禁止する 指定地区が定められた。また、ある石油元売り企業が、他の系列の給油所を、 転籍によって受け入れる場合、その企業の給油所を同数廃止するという、「転 籍ルール」という取引慣行も指導された。

これらの規制が1985年以降、ア メリカ等の外圧、日本市場の開放要求などによって、次々と緩和され、(参考 資料3)コンビニエンスストアーの併設、ファーストフードのインショップ化 等、SSの多角経営、サービスが進んだのである。この多角経営は、日本のSSの 経営を支えているといえる。というのも、SSの損益構造を考えてみれば、売上 総利益を100とすると粗利構成では、ガソリンは4割強のウェイトに過ぎな い。そして、洗車やオイル交換等の油外商品、サービス料の利益は4分の1を 占めているのである。ところで最近では、安全対策という面から今だ認められ ていないが、この過剰ともいわれるサービスを、ガソリンスタンドのセルフサー ビス化によってなくし、その文支払を安くしてほしいという声が挙がっている。 しかし日本では許可されていないこの制度も、欧米諸国ではすでにストアを併 設し、セルフサービスのガソリンスタンドが主流となっている。(表4)

そこで、そもそもセルフサービススタンドとはどの様なものか、アメリカの例 を紹介する。アメリカのセルフサービススタンドには、2つのタイプがある。

  1. 先にポンプで必要な量を給油した後、レジで料金を支払う。
  2. 先にレジで適当な金額(10ドルや20ドル)を支払い、必要な量を給 油した後、再度清算する。(治安の悪い地域に見られる。)
このようなセルフサービスステーションは、少しずつ仕組みは異なるとはいえ、 他国でも取り上げられている。スウェーデンには、ガソリンの自動販売機もあ る。また、現在、旧西ドイツのセルフサービススタンドの普及率は、高速道路 を除いて98%にまで達しているというが、それで火災事故が増えたという事 実はないそうである。

しかし、セルフ化を規制する消防法令を所管する自治省は、 「日本のガソリ ンスタンドは、市街地や住宅地にあることが多く、安全面で欧米と同じように は論じられない」(朝日新聞93年10月16日付)としている。確かに、安 全面だけではなく、他にも次のようないくつかの問題点が考えられる。

スーパー等の大企業が、広大な敷地を利用してセルフSSを開始した場合、業 界の大半を占める中小零細SSが市場から完全に駆逐されてしまう。

セルフにするためにはSSの敷地面積が最低でも300坪以上必要とされるが、 わが国で300坪以上のSSは全体の1割程度に過ぎず、セルフは流通の効率化、 コストダウンの決め手とならない。

セルフにすると、給油時間が現行(6分)の倍以上かかるため、給油効率が 悪化し、販売量が大幅にダウンする。

販売業界の試算では、セルフによって人件費が削減される反面、追加的な設 備投資が必要となることや、油外商品や灯油の粗利益が減少することから、ガ ソリン販売量が今よりも大幅に増加しない限り、セルフにしても価格を安くす ることは困難。

また、年齢や性別によって、サービスを受けたい人、受けたくない人、さら には必ず受けたいサービスなど、消費者のニーズも一定ではないので(資料5) 日本のサービスステーションについては、これらの問題点も重ね合わせて検討 していく必要があるだろう。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997