Group B 平本典昭, 山本真智子 木田悟史, 太田陽介, 森川亜衣子, 石垣直美, 川田美穂, 相部健一, 田所歩, 島崎若菜, 後藤貴樹 ※順不同 |
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「政治活動委員会」(Political Action Committee=PAC)
定義)
「支持する候補者や政党に対して献金を行うために、その会員、株主、雇用者などから任意に資金を調達する法的資格をもつ、経営者、労働、専門職、その他の利益団体の政治部」
1907年にティルマン法で企業が公職の候補者に「直接」献金することが禁止される。
1925年連邦腐敗行為防止法(Federal Corrupt Practices Act)の施行を契機にして、「政治委員会(Political Committee)」(PACの前身)が組織されるようになった。
※「政治委員会」
「候補者や大統領・副大統領選挙人の選挙に影響を及ぼし、または、影響を及ぼすことを目的として献金を受け取り、または支出を行う」
43年には、1)スミス・コナリー法で大統領・副大統領選挙人、上院・下院議員の選挙に関連して労働組合からの献金も禁止。 2)さらに規制の範囲を拡大して、タフト・ハートレー法で会社や労働団体が大統領・副大統領選挙人あるいは、上院・下院議員の選挙に関連して、あるいは、これらの公職のための候補者を選ぶために開かれる予備選挙、政治大会、あるいはコーカスに関連して、献金をしたり、金銭の支出を行うことを禁止。
そこで直接献金を禁止された企業や組合が、「間接」的に献金を行うために考案したのが、PACである。 ただ、PACが広く活用されるようになったのは、ウォーターゲート事件を契機として、政治改革が進められ、その一環として、連邦選挙運動法が改正された後のことである。
この法改正によって、企業と労働組合は、政治目的のために利用する分離資金を設置・運営することが認められた。こうして、PACの数は急速に増加し、PACによる政治献金の額も急上昇してゆくのである。PACの中でも、最低6ヶ月以上登録され、50名以上の献金者リストをもち、5名以上の連邦公職候補者に献金するPACは、「複数候補者PAC」と呼ばれ、その活動範囲は、いっそう広い。
※また、予備選挙と本選挙は別個の選挙としてみなされるので、「複数候補者PAC」は、一人の候補者に対して、予備選から本選までの間に、10000ドルまでの献金が可能。※なお、PACが献金できる候補者の数に制限はなく、一つのPACの献金総額にも制限はない。また、一人の候補者は、複数のPACから献金を受け取ることができるので、受け取る献金総額のリミットは、事実上ないにひとしい。
アメリカの政治献金問題について見たとき、ここ数年にわたり国民、メディアから注目されているのは"アジア献金疑惑"である。今回、私たちはこの"アジア献金疑惑"に焦点をあて、探っていくことにした。この疑惑の一連の流れは複雑に絡み合っているので、添付の構図を参照にしていただきたい。
まず何人かの関係者とその繋がりを説明したい。この疑惑の中心人物はジョン・ファン氏である。彼は中国生まれの台湾育ちの華人、もともとインドネシアの華僑系財閥のリッポーグループが経営する「リッポー・バンク」の経営執行責任者で、事実上リッポーの米国代表であった。1994年、商務次官補代理を経て、1995年民主党全国委員会(DNS)の選挙資金担当副委員長になった。そして、民主党資金集め役として目覚しい活躍を見せる。ウォールストリート・ジャーナル紙によれば、彼が集めた資金の合計は400万〜500万ドルにのぼると見られる。次に、ファン氏と関係の強いリッポー・グループのトップがジェームズ・リアディ氏である。彼も、ファン氏も、クリントン大統領が州知事時代からの知り合いであり、献金供給者でもある。ファン氏は古くから、クリントンと米国の華人実業家との仲介役をしていた。テッド・シオエン氏もファン氏を通じて、クリントン大統領の知遇を得た。彼は、生い立ちについては不明だが、ロサンゼルスを代表する華人大実業家で、メトロポリタンホテル、華字紙「国際日報」(もともと台湾寄りであったが、シオエン氏の買収から親中路線へ)の2社を中核に不動産、貿易など12の企業を所有、経営する。3年ほど前から政治献金を急速に増やし、93年以降民主・共和問わず、中央・地方政界にばらまいた金は35万5千ドルにのぼる。ジョニー・チャン氏も台湾系米人でカリフォルニアの実業家である。
先にも述べたように、リアディー氏やファン氏は、クリントン大統領と州知事時代からの旧知であり、献金をおこなっていた。1992年の大統領選でもリアディー氏はクリントン陣営に17万5千ドルの献金を行なった。この献金自体に違法性はないが、1.リッポー財団米国幹部のジョン・ファン氏が94年に商務省高官に起用されたこと、2.リアディー族系金融グループが米輸出入銀行から90万ドルの信用供与を受け取っていたらしい(ニューズウィーク誌より)ということ、3.同グループの中心にある銀行の元副会長が民主党全国委員会の財務部門の幹部に就任したことなどから、このインドネシア財閥と政権との癒着、献金による対インドネシア政策への影響の有無が問題視されるようになる。この疑惑が急浮上したのは96年10月上旬のことだ。
ジョン・ファン氏は、その元商務省高官として知り得た政府機密を、リッポー財団に漏洩した疑惑がある。また、DNCに入ってからの献金集めの活躍は目覚しく、アジア系企業、実業家と民主党をつなぎ、多額の献金を集める。その内容も違法ぎりぎりのものが多く、返却されたものもある。例えば、1996年4月に、ロサンゼルス郊外の台湾系仏教寺院で、民主党の献金集会が開かれ、14万ドルもの献金が集められたのだが、「提供者の資格が不確か」(大口献金者が出席者の僧侶の名前を使った小額の小切手に分散して資金を拠出した疑い)として、一部返却された。この献金集会を裏であやつっていたのもファン氏である。ちなみに、この集会にはゴア副大統領が出席しており、問題視されている。シークレットサービスの記録によると、ファン氏は95年7月から96年10月の間だけでも、ホワイトハウスに約80回も訪問しており、深いつながりが見られる。
1996年10月末には、クリントン政権に対する台湾からの献金疑惑も浮上する。第一に国民党幹部からの献金疑惑である。ロザンゼルス・タイムズ紙によると、95年9月に台湾与党の国民党とクリントン大統領が会談を行なった際、国民党から1500万ドルの選挙資金の申し出があったと見られる。もし、授受があれば、違法である上に、外交問題にも発展しかねない。香港の週刊誌「亜洲週刊」は、元ホワイトハウス職員のマーク・ミドルトン氏が、95年7月から8月に台湾を訪れ国民党に政治献金を要求、李登輝総統の側近で金庫番の劉泰英・国民党党営事業管理委員会主任委員が「1500万ドルを大統領選資金として提供する」とも報道した。また第二に、前述のジョン・ファン氏が台湾出身ということもあり、彼を仲介とした献金の疑惑も持たれた。米政権も台湾国民党幹部もこの疑惑を全面否定する。特に、国際社会で台湾の金権イメージが定着すれば、中国との外交駆け引きで不利になることも予想されるため、台湾立法院(国会に相当)では、野党議員らが「事実を徹底解明せよ」と当局に迫るという場も見られた。 こうした疑惑の中、96年11月クリントン大統領は再選を果たす。共和党議員らは司法長官に対し、海外献金疑惑を調査する特別検察官の指名を再三要求するが、司法省は拒否していた。
1997年の2月13日、ワシントンポスト紙が、「クリントン再選に絡むアジア献金疑惑に関連し、中国政府が民主党への献金に直接関与していたらしい」という報道をする。これは、中国大使館での献金計画を情報当局などで明らかになったとされ、当時ファン氏が中国大使館に足繁く通っていた事実もある。ここから、アジア献金疑惑の裏に中国政府の影が見えるようになる。中国大使館は否定したが、共和党や報道機関はこの問題を重視し、追究し始める。
中国国営通信の新華社は97年3月22日「中米関係を破壊する陰謀に気を付けて」と題する論評記事を発表、台湾や米国などでの中国の対米政治献金疑惑に対し、捏造であると反論した。
4月には再びワシントンポスト紙が、中国政府の高官が、米国の政治家に対する政治献金計画を95年の段階で了承し、96年の米大統領・議会選挙を経て、現在も続けている、さらにはFBIがすでにその証拠を入手している、と報道した。
1997年の6月に、新たなキーマンとしてテッド・シオエン氏の名前があがる。3年ほど前から献金を急増させた氏と、中国との間に有力なパイプがあるという疑惑が発覚した。ロサンゼルス・タイムズ紙やニューズ・ウィーク紙などによると、米捜査当局が在ワシントン中国大使館と北京の交信を傍受した結果、94年〜95年に中国政府からの資金が、いくつかの銀行を経由し最終的にメトロポリタンホテルの米国の銀行口座に送金された疑いを持ち、政治献金との関連について捜査している。問題はシオエン氏の献金の源である。外国人の政治献金は禁じられているが、「米国で稼いだ金を、米国籍の家族の名義で献金したのなら法的問題はない」という見方もある。焦点は北京からの資金が献金に使われたか、である。
1998年2日、アジア献金疑惑に絡み、証拠隠滅などで起訴されていた中国系実業家が、初めて逮捕される。逮捕者のチャールズ・トリー氏はアーカンソー州リトルロックでレストランを経営していたころからの大統領の知人で、民主党の大口献金者の一人である。献金に絡み1.台湾の新興宗教団体からの「トンネル献金」を工作 した2.ホワイトハウスを二十三回にわたって訪問し、アジア献金の橋渡しをした3.献金の見返りとして、機密情報や政府公認の肩書を得た4.米上院と捜査当局から提出命令のあった関連資料の隠滅を指揮した――などの疑いがもたれている。
1998年の5月20日には、1996年にジョニー・チャン氏が中国人民解放軍の女性将校から同軍が出所とみられる約10万ドルを受け取り、民主党へ献金、見返りに中国のロケットによる米衛星の打ち上げ規制を緩和したという疑惑が急浮上した。米国の技術が中国経由でパキスタンで流入、核の脅威を増幅したという指摘まで出始めている。クリントン大統領はこの疑惑に対し、「外交上の決定はすべて国益に基づいている」と強調している。
クリントン大統領、ゴア副大統領の献金疑惑(アジア献金以外も含む)に対して、共和党から再三、特別検察官の設置要求がなされ、予備捜査、事情聴取がおこなわれたが、結局指名はされなかった。
この一連の流れをわかりやすくまとめると、クリントン大統領の近くには州知事時代から、多くの華人実業家が大口献金者として存在しており、互いに密接なつながりを持っていた。特に95年頃から、96年11月の大統領選に向けた多額の違法ぎりぎりの献金が目立ちはじめ、裏での外国政府との癒着がうわさされるようになる。当初はインドネシア、次に台湾、そして中国と疑惑の対象国が変わっていくが、特に、中国が台湾に対抗する構図が見られる。議会関係者は、「すべては95年6月の李登輝総統の訪米で始まった」と話す。同総統が母校コーネル大学での講演という私的訪米を実現した裏には、台湾系ロビーの米議会への猛烈な働きかけがあった。このロビー活動により、上下両院が圧倒的多数で李登輝の訪米実現を決議したのだ。中国はこれを受け巻き返しをはかったに違いない、という見方が多い。95年末には米議会への働き掛けを検討するグループが発足したとも言われる。
アメリカは、「集団」の国であり、これらの集団が多くの場合「直接的に政府の運営の主導権を握ることによってではなく、政府や議会に対してメンバーの共通的利益に基づく要求を提示することによって、この利益を増進しようとする団体」=「圧力団体」として、活動してきたという意味において、アメリカは建国以来特徴的に圧力団体の 国であり続けているといえる。
※ここに歴史的背景あり(金融・製造・貿易・海運等)
アメリカは、「集団」の国であり、これらの集団が多くの場合「直接的に政府の運営の主導権を握ることによってではなく、政府や議会に対してメンバーの共通的利益に基づく要求を提示することによって、この利益を増進しようとする団体」=「圧力団体」として、活動してきたという意味において、アメリカは建国以来特徴的に圧力団体の 国であり続けているといえる。
※ここに歴史的背景あり(金融・製造・貿易・海運等)
一般的には、社会的・政治的条件の変化の中での各利益の「自己防衛」あるいは「自己利益の増進」をきっかけとするが、アメリカの場合、封建主義の時代を欠いた移民の国として発展したという事情を加味して、(伝統がない・多人種・地理的拡大など)国民間の利害の多元的な対立は本来、不可避であり、この対立の調整・解決へ向けての諸利益の表現の手段として、圧力団体は、不可欠の政治的手段であったといえる。
80年代初頭には、共産圏(ソ連・東独・中国)を含む130以上の国の政府・団体・企業が、米国で外国ロビイストを雇っており、ワシントンで活動しているこれらのロビイストの総数は700人以上、関連しているすべての人を含めると6000人を超えると推定された。ちなみに、ロビイストは、元議員、元官僚、法律家など議会の内情に精通する 「政治的決定に影響を及ぼすために活動する圧力団体の代理人」のこと。基本的に圧力団体による活動対象は、「権力の存在するところ」であり、アメリカ合衆国の国際社会の地位をふまえると、米連邦議会・政府の決定が他国の政治・経済に与える影響は大きい。
「連邦議会は、……人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を政府に請願する権利を縮小する法律を制定できない」(連邦憲法第一修正より)
これが、ロビイング活動を支える強力な柱となっている。
1946年連邦ロビイング規制法…登録の義務・金銭の授受を報告/公開
ロビイストは、有給の使用人をもつ団体−会社、組合、協会その他の組織集団で、1四半期に、
※規制のかかる範囲が広がった
利益(圧力)集団の立法府へのはたらきかけは、圧力活動の重要な部分。つまり、効果的だということ。
連邦憲法第一修正に抵触せずに、いかに圧力団体を規制するか。アメリカ市民的自由権の中でも最も重要な権利である自由結社権・請願権・言論及び宣伝活動の自由権に基づいているからである。
「患者を殺して、病気を治すことはできない」
クリントンを含めた民主党が献金を受け取るのはなぜであろうか。資金が必要となってくる理由としては、数々のスキャンダルにおける裁判費用、そして選挙資金費用の増大が挙げられる。しかしながら、いくら資金が必要といえども政治的に不正な献金を受け取ることは違法であり、その献金疑惑の成り行き次第では政治家としての命にかかわる大問題となるはずである。それにもかかわらず、クリントン政権が献金を受け取れるのはそれなりのアメリカという国の特有の背景があるからである。この二つの疑問の答えを示していきたい。
クリントン夫妻と彼らが君臨するホワイトハウスはクリントンが大統領に就任して以 来の5年間、途切れることなくスキャンダルを引き起こしてきた、という事実がある。その中でも一番の大物はアーカンソー時代の収賄事件であるホワイトウオーター疑惑であるが、それ以外にも、トラベルゲート、ホワイトハウス法律副顧問の自殺事件、トゥルパーゲート、FBIファイル疑惑、一時は絶体絶命かとも報道されたモニカ・ル インスキとのスキャンダル、そして今回の民主党の献金疑惑、というように次々とスキャンダルを引き起こしては世間を騒がせてきた。
ここで、先述したスキャンダルについて、簡単にそれがどういった事件だったかを述べる。
以上のスキャンダルの数々からして見ての通り、スキャンダルと共棲しているのがこのクリントン政権の特徴でもあるといえる。がその一方でこの政権は多くのファンを抱えているのもまた本当である。就任以来スキャンダルをたてつづきに引き起こすことが、彼らの政治的求心力となっているのではないか。スキャンダルに基づく抗議に対して、それと戦う態勢が組成され、これによってクリントンのファンは結束する。こういった選挙戦のような防衛キャンペーンを、選挙が終わってもなお続けているのがクリントン政権であり、その運動エネルギーが彼らの政治力の秘密であるといえる。
振り返ってみればこの5年間、まるで手品のようにスキャンダルが発覚し、これが政治的求心力が政権を支えてきたという見方もできよう。数多いスキャンダルそれぞれに対処するために、選挙戦に匹敵するような防衛キャンペーンの続行を維持し、また疑惑をまた新たに別の疑惑を引き起こすことによって沈静させるような、スキャンダルが基盤となっているこの政権を維持するのには、言うまでもなく莫大な費用がかかってきたはずである。例えば、大統領の女性スキャンダルを手がけるボブ・べネット弁護士らは、時間数百ドルの報酬を受け取るワシントン有数の高額所得者である。 スキャンダルに対抗するためには、新たなスキャンダルにもつながりかねない 猛烈なカネ集めに奔走せざるをえないという、皮肉な悪循環に陥ってしまっている。
大統領といえども、その職の給料は実は高くはない。そしてスキャンダルに対処する為の出費はかさむ一方である。だとしたら政権への献金は有り難いものとしてクリントン政権の目に映ってもいいはずである。大変安易な仮説ではあるが、大統領といえども、一人の人間である上、目の前に差し出されたお金に手をつけてしまうようだ。この理由からして彼らは受取るのではないだろうか。
ところで、 政権にとって選挙は費用が多くかかるものである。政治家は誰しも選挙を経てきているわけで、これはクリントンに限ったことではないのだが、グラフからしても明らかなように、1974年から1984年にかけて、選挙運動資金は高騰した。大統領選挙、中間選挙をひかえた時、いかにその為の費用がかかるか、それに伴って資金集めに重点がおかれてきているか、また近年選挙費用が昔と比べて年々高騰してきているかがみてとれる。
選挙活動一つとっても、その資金が十分でなければマスコミをつかってのアピールや各地への遊説等が困難になると考えられ、その活動は当事者にとって満足のいかないものになってしまうであろう。やはり選挙も金を食うのである。
ホワイト・ウォータ事件ひとつをとってみても、大統領側は「独立検察官などついても、新し事実などでてこない」などという強気な姿勢を取り続けていた。政治家にとって致命的ともなり得るこのような献金スキャンダルに対して、なぜこのようにクリントン政権は、総じて楽観的に取り組む事ができるのだろうか。その答えはマスコミをはじめとする献金疑惑への追求がうまく機能していない点、それに付け加えてアメリカ人の国民性が挙げられる。
まず、アメリカ世論が次から次へと浮上してくる政党と政治献金疑惑問題についてどのような考えをもっているのかを示したい。National Journalに1997年8月にアメリカCBSが行った世論調査が報道された。
大変重要 | 37% |
ある程度重要 | 38% |
それほど重要ではない | 20% |
全く重要ではない | 1% |
分からない・無回答 | 4% |
大変詳しく | 8% |
ある程度詳しく | 36% |
それほど詳しくない | 36% |
全く詳しくない | 19% |
分からない・無回答 | 1% |
この世論調査から、アメリカの国民は大統領選挙資金調達問題の深刻さを認識してはいるものの、その問題についての知識が乏しいという現実が読み取れる。
この原因としてはまず、疑惑を追求するマスコミが効果的に機能していないことが挙げられる。たしかに、クリントンの州知事時代から大統領選挙、最近に至るまでアジアからの献金疑惑など調査はしているものの、決定的にクリントンを追い込むまでの深い取材ができていないのが現状である。また、その疑惑の内容が複雑すぎて国民が理解するには難しい。ワシントン・ポスト紙のメアリー・ジョーダン記者は「一連の疑惑は複雑すぎて有権者が理解できない。理解できたとしてもクリントン本人を直撃するスキャンダルがない。」と分析する。
これに付け加えアメリカ人の政治家に対する見方が大きな要因となっている。つまり、献金に関していえば、民主党に限ったことではなく共和党も政治家ならみんなやっているという意識が人々のなかにあり、アメリカの有権者は政治家にモラルなど期待しないという事が言える。また、少し古いデータであるが、アメリカ国民は大統領に人格よりむしろ、かれが打ち出す政策を重視するという事を裏付けるデータがある。「連邦政府は信用できるか?」という94年の世論調査に「イエス」と答えた人は22%、反対に「ノー」は78%に上った。38年前の58年にはイエスが73%でノーが23%だったのに比べ、政府への信頼が大きくなくなっているという事が言える。この比率が逆転したのは、ベトナム戦争をめぐって世論が分裂した60年代後半である。続くニクソン政権下のウォーターゲート事件でワシントンの不信は決定的なものとなった。このように政府への信頼は低いという事実はあるものの、そのかわり、打ち出す政策やそれによる経済の好調さがあれば多少の不正に対しては寛容な態度をとるという事がいえるのではないだろうか。アメリカ国内でよく聞かれる議論は「経済が好調で戦争もおきていない。米国民は政治に不満など何もない。」といったものである。景気の好調がそのような不正を吹き飛ばすということである。つまり、ブッシュ政権は輝かしい外交政策を展開した一方で内政では成果が上がらなく、それにかねてからの景気の悪さが拍車をかけ退陣へと追い込まれた。しかしながら、クリントン政権時代は総じて好景気であり米国民としても退陣に追い込むような不満などはあまりないという事なのである。
つまり、さまざまな要因からなるクリントン政権の支持率の高さが献金に歯止めをきたさないひとつての原因となっているのはたしかである。
つい先日98年5月19日の、朝日新聞に「米民主党、中国軍幹部から10万ドル、96年大統領不正献金疑惑」のタイトルで、96年の大統領選挙にからんだ不正献金疑惑で、中国とホワイトハウスの関係が報道された。
大統領選に絡んだ一連の不正献金疑惑の中で、中国系実業家ジョン・ファンをはじめとする、チャイニーズコネクションの存在が浮かび上がってきたが、今回の報道で、その背後にさらに中国政府が絡んでいたことが明らかになった。
もともと、中国がアジアからの不正献金疑惑の背景にいるだろうということは言われていたのだが、(それもかなりの信頼性をもって)
この不正献金に深く関わっていたと考えられる中国系米国人実業家のジョニー・チャン氏が、中国人民解放軍の幹部から受け取った約10万ドルを民主党に献金していたと司法省に供述していたことが明らかになったことから、中国政府がバックについていただろうということは、ほぼ確実なものになりつつある。
では、一体なぜ中国政府はこのような献金を行ったのだろうか?
以下ではこのことについて考えていく。
まず中国が対アメリカ関係で持っていた利害とは何だっただろうか?
以下に考えられる点を挙げる。
95年に台湾の李登輝が米コーネル大学に行くことを、アメリカが認めた問題。台湾首脳による米国訪問は、カーター政権が北京政府を、正式な政府と認めて以来はじめてのことだった言われている。このためこの李登輝訪問のニュースは中国側にとってはかなりのショックであったと思われる。
台湾はロビー活動が非常に巧妙だと言われるが、これ以降中国も台湾と競ってアメリカ政府へのロビー活動を行っていったものと思われる。こうした台湾と中国との激しいロビー競争が裏舞台で行われていたと見られ、95年以降、アジア関係からの不正献金疑惑が急激に増えていくきっかけにもなった。
まずはじめに、MFNとは何かというと、関税率などについて、他の国と同等かより有利な条件で取り扱うことを約束するもので、米中両国は通称協定にもとづき80年以降相互にMFNを与えている。
米国は毎年MFNの更新を行っているが、これは米国の通商法が「非市場経済国で、移民の自由を含む人権侵害が行われている国へは、MFNの供与を禁じる」との条項を設けているためだ。
中国の人権問題は今だにジュネーブの人権会議で問題にされるように改善への方向性が見えていない。
このことから毎年6月までに更新されるMFNは、アメリカ議会の中で毎年問題にされるのである。
さて、では中国にとってMFNはなぜ問題なのだろうか。上に書いたようにMFNは毎年更新されるわけだが、仮に更新されなかったとするとどうなるだろうか。世界銀行の予測によると、中国の対米輸出はこれによって少なくとも42%減少するという。
対米輸出の減少によって、中国経済は大きな打撃をうけるだろう。これは、軌道に乗り始めた改革開放路線に支障を与えるだろうし、また、WTO加盟にも影響を与えかねない問題である。かといって、中国の人権問題は、よそ者のアメリカにあまりごちゃごちゃ言われたくない。
こうした思惑から、中国はいろいろな手でアメリカの懐柔策を試みることになる。特にこれは95年から活発になりだす。中国は、主に米国財界人への積極的なアピールを展開していくのだが、これが結果として96年のMFN更新につなっがと考えられる。
これは、上に書いた中国のアピールがGMやIBMなどの大物財界人を刺激したことから、彼らは中国の意を汲んだロビー活動を議会に展開していき、MFN投票の前に合法的に2000万ドルの政治献金をして、それが議会の対中緩和政策に何らかの影響を与えたからだとも考えられる。
これ以外にも、合法、違法含めた形で様々な献金が行われていたと考えられているが、今のところ確たる証拠はあがっていない。
しかし、94年に、アメリカがMFN更新問題と人権問題を切り離して考えることを決めるなど、中国にとって有利な政策をとっていることから、何らかの強い力が働いたことはほぼ間違いないだろう。
以上から民主党が国内、海外を問わず、多額の政治献金を受けてきた事が理解できる。これに対抗して、アメリカのもう一つの政党である共和党と政治献金の関係はどうなのであろうか。以下ではその点について探ってみる事とする。
新聞や雑誌などのメディアに報じられた記事を基にすると、共和党も民主党と同様に政治献金を受けてきた事が分かる。この献金は、国内、海外両方を含むものであり、また、これらの献金差出人は様々の背景、分野、思惑を持った人達である。事実、連邦選挙管理委員会のまとめによると、1995年から1996年の選挙会計年度で共和党がが集めた政治資金は総額5億ドル余であった。共和党への国内の大口献金者は、自動車、鉄鋼、たばこなどの大企業がずらりと並ぶ。共和党と政治献金の関係を報じた記事の内容の一例を以下で挙げてみる。
従って、共和党も民主党と同じ様にありとあらゆる人や団体から献金を受け、その資金を政治活動に使用してきた事が伺われる。
しかしながら、過去3年間に報じられた政党と政治献金疑惑の関係について記された記事を調べてみると、民主党に関連する記事の方が共和党に関連する記事と比べた場合、圧倒的に量が多いのが一際目立つ。共和党よりも民主党が関連する疑惑に対しての調査の方が厳密に進められている。民主党の不正政治献金疑惑についての報道は、1996年の大統領就任直後から行われていたのに対して、共和党に関連する献金疑惑は最近の1997年の5月になってから報道されだした。また、民主党の政治献金疑惑問題の方が、メディアや国民から重要視され、深刻な問題として取り上げられている。同じ政治献金疑惑の問題であっても民主党と共和党に関してではここまで違うものなのだろうか。その理由として以下の事が考えられる。
第一に、各党が受け取った政治献金提供者の背景の違いが挙げられよう。民主党は大企業の献金があるにはあるが、金額は共和党よりも遥かに少なく、労働組合などからの小口献金の比率が高い。一方、共和党は、国内の大企業から大口献金を受けている。金額的に見ると、共和党が受けている献金の方が多いかもしれない。しかし、これらの献金ははあくまでも国内企業から得たものであり、従来の政治献金調達システムに基ずくものであるため、民主党が関連している海外から受けた政治献金とは異なる。
第二に、現在の政権を握っているのは民主党であり、共和党は野党であるため、必然的に野党が関連する政治献金疑惑問題よりも与党が関連するものの方が重要であるという事が言えよう。政治献金とは、そもそも自分に好都合な政策や処置を施してもらうために与えるものであるため、その現時点で政権を握っている党の方に献金が集中的に集まることは必然的な現象である。言い換えれば、政権を握っている政党に献金をする事は、政策を直接的に左右する恐れがある為、深刻な問題であると言えよう。
また、この疑惑問題については、野党が、与党の不法的に調達された政治献金について調査し、疑惑を浮上させ、国民にその実態を暴露させる事によって、国民の与党に対しての印象を悪くさせ、人気を損なわせ、結果的に大統領への支持率の低迷へと導かせようとする、野党である共和党側のの企て、ないしは戦略の影が見られる。
以下に、なぜ今回のアジア献金が大きな政治問題であるのか、について考察す る。理由は大きく分けて三つ考えられる。まず第一に、今回の献金疑惑の背後 に他ならぬ中国という国が存在したこと。この他に、民主主義の腐敗が国益に 悪影響を与えること、さらに真に必要な政策の方向性を見失うことがある。一 つ目は、今回のアジア献金問題に特徴的な問題であり、後の二つは、献金とい うもの一般にも共通する問題である。
実は、献金をはじめとした、外国ロビーストの問題は、今回が初めてのことではない。80年代初頭には、共産圏(ソ連・東独・中国)を含む130以上の国の政府・団体・企業が、米国で外国ロビイストを雇っており、ワシントンで活動しているこれらのロビイストの総数は700人以上、関連しているすべての人を含めると6000人を超えると推定された。このように、外国ロビーストの献金問題は、以前から存在した問題である。にもかかわらず、今回のアジア献金疑惑が大きな問題として取り上げられるのは、その背後に、他ならぬ中国という国が存在していることが理由として考えられる。
アメリカにとっての中国の脅威を考えるとき、それは多方面に及んでいる。まず、中国経済の国際社会への参入の問題がある。中国経済は21世紀にはアジア最大になるとも予測される。中国経済を国際システムから排除し続けることは、国際貿易や投資の秩序維持に対する、重大な脅威だというのである。また中国の人権問題は、中国の政治的安定に関連し東アジアの安定にかかわる。それと同時に、人権問題が米中関係の争点とされた場合、議会の反発を招いて、政府の効果的な対中政策を妨げる恐れがあるという点でも、アメリカの国益に大きな影響を与える。この他にも、核拡散問題、環境問題、麻薬取引、国際犯罪、不法移民問題など、様々な問題領域においてアメリカは中国と協調しなくてはならない。こうした意味で、中国は、アメリカにとって、ポスト冷戦型の脅威と言われている。
クリントン大統領98年1月に行った一般教書演説においても、「中国とは対話を深める。孤立化した中国は米国のためにならない。私自身、中国を訪問する予定で、中国首脳も当地へ招待する。積極的関与が人権問題など中国との基本的な相違を解消する最善の方法だ。」と述べており、米国の政策における中国という国の重要性がうかがえる。
こうしたことから、「外交にカネが絡んでいた」ということ以上に、「対中外交がカネによって左右されていた」ことが、この問題を大きくする理由であるという見方は可能である。
次に、献金するほど裕福でない、またはそれ程モラルの低迷していない一般人 の意見が反映されないことである。これは民主主義の目的・あり方に逆行する。 また、米国が国の価値観、即ち民主主義の世界への浸透を国益に掲げている以 上、献金による米国の民主主義の腐敗は他国の信頼を崩し、結局は米国の国益 自体を損ないかねない。
最後に、カネの力が働く結果、米国の国益や多国家にまたがる世界的な利益につながる政策を見失うことになりかねないということがある。米国の対中国MFNの適用状況に端的にこの現象が見られる。従来、対中国MFNは単独では適用されず、人権問題を改善するためのカードとして、MFNと人権問題が共存した。しかし1994年6月の対中国MFN更新の際に、人権問題とMFNを別個に扱うことが決定された。この政策の変更はアジアからの献金の成果と密接な関わりがある、との見方もある。これが本当だと仮定すると、人権問題の改善という世界利益の追求を目指していたかつての政策を米国は献金により歪めてしまったことになる。