★お知らせ

コメントフォームの不具合が治りました。

2005.11.15 Tuesday

モンブランの【Racing Green】レーシング・グリーン

 モンブランから今年レーシング・グリーンのインクが発売された。さっそく購入して、3本の万年筆に吸わせてみた。まずはセーラー×無印良品の【万年筆クリア】細字、そしてペリカン【M805】中字、モンブラン【#149】中字である。

 モンブランのブルーブラックと比較して、インクフローは良いのでどのペンでも滑らかに書ける。しかしセーラーのブルーブラックほどの流量が得られないので、細字のペンではセーラーの方が良かろう。M805と#149では良い書き味である。

 さてこのインク、レーシング・グリーン【Racing Green】という名称が付いているのはなぜか? 車好きの方なら既にお分かりであろうが、「ジャガー等のブリティッシュ・レーシング・カーに塗られてきた伝統色」、といえば多くの方がイメージを持たれたのではないだろうか(写真は昔のジャガー)。

jaguar


 深く渋い緑色で、日本人には懐かしみのある色である。調べてみると、日本の伝統色に『錆鼠 さびねず』(#122e29)という緑色があった。これがレーシング・グリーンそのものなのである。

 写真を御覧頂こう。1番目はペン先をティッシュ・ペーパーで拭いて乾燥させたもの、2番目は上質紙のメモ用紙にM805の中字で書いた跡である。撮影の関係で実際の色よりも僅かに黄味がかっており、実際には上記の「錆鼠」や、写真のジャガーの色に近い。
racing1racing2




 こちらから若干安く買えます。

2005.10.30 Sunday

モンブラン批判の奇妙

149-2


 インターネットや雑誌媒体上で散見される「モンブラン批判」には2つの種類がある。

 1.事業体の経営スタイルに関するものと、
 2.ペンそのものの品質に関するもの、
 である。昨今では、1.と2.が渾然一体となってfallen idleとしてのモンブラン像が出来上がっているように見える。
 
 1.について。
 モンブランの「ブランド化戦略」が批判されることが多いが、これに関して小生は何とも言えない。基本的に筆記具というものは、品質さえよければ、製造元の経営戦略に口出しする必要はないと思うからである。製造元がブランド価値を重視するコングロマリット企業だろうが、場末の手作り工房であろうが、問題にはならない。そして、自分が使用しているペンの製造元が「高級腕時計」を製造販売していようがいまいが、小生には興味がない。
 さらに言えば、【ブランド価値】を高める経営努力が【品質】を低下させる…こんなことがもし事実だとすれば、老舗企業の経営史としては興味深いかも知れないが、なかなか聞いたことのない話である。有り体に言えば、販売戦略が変化しても、ペン先職人が同時進行的に腕時計の針を作るわけではないのだから、心配は無用なのではないか。1.の批判は、製造業の【製造部門の品質管理】と【販売部門のブランド戦略】とを一括りにして議論してしまったようである。

 2.について。
 ペンそのものの価値が損なわれたという議論には、しばしばモンブランの#149・#146の「ニブ(ペン先)の硬さ」が例証として挙げられている。たしかに、ビンテージのモンブランのニブは非常に柔らかく、一方現行品のニブは強い弾力を持っている。そのことが「品質低下」の証しとして繰り返しレヴューに語られているのだが、いくつかの疑問が湧く。

 まず、柔らかいニブを持っていることが優れたペンの条件なのだろうか。小生はそうは思わない。一般的に柔らかいニブは日記・手紙の筆記やメモ書きには向くが、原稿筆記やノート作成には向かない。思考に集中しながらペンを走らせていると、筆圧は次第に強くなり、多くのペンではペン先のポイントが限界以上に開いてインクの供給が止まってしまうからである。それに、柔らかいペン先は人間の集中力を、【書く内容】よりも【ペンそのもの】に引き付けてしまい、思考の質を落とす。
 柔軟なニブを持つペリカンM1000などは書き味を楽しむための万年筆であって、M1000で長時間の筆記をしようものなら、ペン先を曲げてしまう惧れから仕事の集中力に支障が出る。

 第二の疑問。市場には道具として優れた「硬い」ペン先の製品が溢れているが、それらについて一々「低級品だ」との言辞をたれる輩はいない。世の中には、硬いニブを「仕事用」に用いる、分厚いマーケットが存在するのである。
 私が言いたいことは、モンブランのペン先が硬くなったのは確かだが、それは「品質低下」などでは決してない、ということだ。

 柔らかいペン先を好むなら、ペリカン、オマス、セーラー・ナギナタを選択すべきであって、現行モンブランにニブの柔軟性を求めても仕方がないのである。現行#149はむしろ、ハードな仕事用の道具として適している。


推奨筆記具†: セーラー・プロフィット21。ペン先の質はなかなか。程よい硬さと潤沢なインクフローが約束される。特にロジウムプレート(下)のニブはインクフローが秀逸。




推奨筆記具†: オマス・オジバコレクション・ギロシェ。柔らかいニブを好むなら、オマス。このモデルは廃盤になるとかで、半額で売られ始めている。


2005.10.29 Saturday

モンブラン・#149 を擁護する

149-1


 モンブランのフラッグシップモデルは言わずと知れた「Meisterstuck:マイスターシュトゥック」。直訳すれば「最高傑作」か。

 モンブランのマイスターシュトゥックにはいくつかの基本的なモデルがあり、主にペン先の太さとペン軸の太さにより番号で区別される。最大のモデルは多くの作家に愛された#149である。

全長: 164mm(収納時149mm)
最大径:約16mm
重量: 約33g

 一般的に、一回り小さい#146のほうがバランスが良いと言われる。客観的に見て、#149の重量33gは重いのである。が、私の手には#149が合うようだ。何故かと考えてみると、普段私は#149のキャップをとって筆記することが多いからである。キャップを取ると、重量が24g程度になり、多くの万年筆の重量と等しくなる。キャップをつけたままの筆記は、まるで定規でも握っているかのごとき感覚で、くたびれるばかりか、目立つ。
 
 経験的に、ペリカンM1000やセーラーのキングプロフィットなどの大型万年筆と付き合うときは、キャップを嵌めたり外したりしながら、手の負担に変化をもたせて筆記し続けると楽しいものである。

 ニブについて。「モンブランのニブは硬くなった」とは言い尽くされたインプレッションであろう。確かに#146の小さくて分厚いニブは柔軟性があるとは言えず、非常に硬いバネのようである。#149の硬さは#146よりも顕著で、殆どしならない。国産万年筆の、毛筆のようなタッチはモンブランに望むべくもないことは事実である。

 しかし、#149は#149で使い道がある。

 一言で言うと、高品質万年筆のなかで、モンブラン#149は最もタフで乱雑な筆記に耐える道具だということである。
 ヘビーライターの筆記速度は速い。速い筆記は強い筆圧を伴う。書けば書くほど筆圧は強くなり、セーラーのような柔らかいペン先では先端が開いてしまい、インクが途切れることになる。勢い、筆記速度が乗ってきたときには、柔軟なペン先の万年筆には降板してもらわねばならない。

 そんなときに、硬くて味気ないと思っていたマイスターシュトゥック#149を握ってみると、このペンの良さが分かる。#149は、人間が筆記という思考過程に完全に集中することを可能にする道具だという事である。#149は詩を書くためのペンでもなく、ペン先のしなりを堪能するためのペンでもない。#149は筆記のための、それもとびきりハードで長時間の筆記をこなすためのペンなのだ。
 柔らかいペン先のしなりを気にしながら筆記するなどというのは、人間と道具とのゆがんだ関係かもしれない、と考えさせてくれた万年筆であった。



<< 3/3