1212 返信 ドイツの国旗と国歌の歴史的経緯 URL クマ 2000/04/29 03:56

 川藤さん、こんにちは。

 アクセス数もう6万を突破しましたね。昨日は一日8000アクセスということで、いちいち何万になったと言っているのが煩わしくなるほどの勢いです。しかし、落ち着いてくればまた500ぐらいになるでしょう。

 ドイツ人が国旗国歌をどう受け止めているのか、ということですが、実際の生活上どのようにしていたかは実際に生活されていたGAOUさんのほうがお詳しいでしょう。

 歴史的経緯について、私の知っていることを少し述べたいと思います。・・・久しぶりの歴史認識ネタですね。

 先だって国旗国歌法が議論された際に、「世界では国旗国歌に敬いをもって接するのが当然なのであり、日本は異常」という意見がよく聞かれましたね。小林よしのり氏も『戦争論』において「公共心は国によって違う その違いを認めるのが私の立場だ なお世界共通の公共心は『国旗に敬意を払う』ということだが 日本だけが恥ずかしいことにこの公共心を持っていない」と言っています(p.345)。

 「人を殺してはいけない」(大虐殺をしてはいけない)とか「物を盗んではいけない」(略奪はしてはいけない)という押しも押されぬ「世界共通の公共心」に比べれば、「国旗に敬意を払う」ていどのことは「世界共通」とはいいきれないでしょうし、ましてかつて侵略の旗印に使われていたという経緯があってはどうにも、それを敬えといわれても困りますね。

 さて、ドイツではどうなのかというお尋ねです。

 ドイツの場合、国旗についてはあまり問題はないようです。
 よくドイツは国旗だったナチのハーケンクロイツ(鉤十字)を戦後は違う旗(黒・赤・金)に変えたではないかという意見を聞きますが、これは語弊があって、国旗は戦前から黒・赤・金の今のもの、ナチス時代だけが鉤十字だったんですね。

 戦後も変わっていないという意味では日の丸と同じなのですが、しかし、この「黒・赤・金」・・・略称して「三色旗」と言いたいが某教団の旗をこう言うのであくまで「黒・赤・金」、この旗は侵略の旗印としては使われず、逆にワイマール時代の民主的な体制を示すものとして、戦後は早くから国旗として遇されてきたとのことです。

 しかし今ではこの旗よりも欧州連合の旗、白地に星の旗、のほうが好まれているようですね。

 国旗についてもさらにいろいろな問題があるのですが、国歌になると話は複雑すぎて掲示板では書けません。戦前から同じ「ドイチュラント=リート」ですが、歌詞が少々「勇ましい」ので、反発も強いです。しかし、侵略の過程で歌われたということは少なく、やはりナチスの歌がいろいろとありましたから、こちらのほうは歌われない、というか法的に禁止されているのではないかと思います。
 
 戦後は「どうしましょう?」という状況でしたが、保守的なアデナウアーが「ドイチュラント=リート」を復活させ、その代わり「勇ましい」第一節と、ワインや女性のことを歌っている「軽い」第二節は公的な場では歌わないというようにしています。

 国民国家を成立させていく過程でできた勇ましく伝統ある国歌が今ふさわしいのかという疑問が起きている点では、フランスと事情は似ていますね。

 ドイツの国歌には以上のような問題があるので、法的には定められていません。国旗がドイツ連邦基本法で定められているのとは対照的です。しかし、国旗が船舶やその他の実際問題で必要であることに比較すれば、国歌には実際的必要性は少ないので、ナショナリズムから脱しつつある国にはもう流行らないのかもしれません。

 それは日本でもそうで、「祝日に国旗は掲げますか?」という世論調査の項目はあっても、「祝日に国歌を歌いますか?」という項目はないのですね。歌わないのが当たり前すぎて。国歌は長い目で見れば死滅していくものだと私は思っています。

 その他いろいろと言いたいことはありますが、眠くなったのでここでやめます。
 それでは。