5580	返信	Re:南京事件について	URL	渡辺	2001/03/09 20:41
masaoさん＞ > 初めて投稿する者ですが、否定派の人に最近、畠中秀夫という人が、旬刊「世界と日本」に「聞き書き昭和一二年１２月南京」とだいして、その中に石川達三、「朝日」上海支局長の橋本登美三郎、足立和雄にインタビューしていて、誰も見ていないと書いてあったといわれました。また、阿羅健一氏が、「正論」に６１年５月号から「日本人の見た南京陥落」を連載していて、その中で上海は健軍参謀大西大尉、松井軍司令官付陸軍通訳官岡田尚、東京日々新聞カメラマン佐藤振寿、同名通信無電技師細波考、報知新聞従軍記者田口利介、同名通信映画ぶカメラマン浅い達三、都新聞記者小池秋羊、読売新聞技師樋口哲雄、東京日々新聞カメラマン金沢善雄、読売新聞上海特派員森博などにインタビューしているが誰も見ていないと書いてあったぞと言われ反論できませんでした。 > 誰かこの記事はどれくらい信頼できるものなのか知っていたら教えてください。はじめまして。お聞きしたいのですが、「聞き書き昭和一二年１２月南京」などでは何を「見ていない」と書かれているのでしょうか？私自身の調べたところでは、「南京大虐殺」は、「みた」「みなかった」というような規模の事件ではなかったと思います。ジャーナリストの２、３千の焼死体を河岸で見たというような事後や小規模な殺害の目撃はありますが、「大虐殺」をしている現場を目撃したという証言はいまのところ読んだことはありません。組織的な多数の虐殺についての日本人による証言は、すべて軍人によるものです。この事件の性質から、むしろ「大虐殺」を見ましたと言うほうが不自然だと思います。松井岩根氏が「見ていない」ことは明らかで、最初から問題にはなっていません。ジャーナリストによる証言には下記のようなものがあります。（手元にあるものだけを紹介します。）　1)　佐藤振壽（当時毎新聞写真部員）「八十八師営庭の中国兵”処断”」＝「従軍とは歩くこと」＝偕行社「南京戦史資料集Ⅱ」 P610 　　　　内容：「励志社」方面の兵営のような建物の前で「敗残兵だろうか」１００人くらいを順に穴の前にひざまずかせ後頭部から射殺、もう一方の穴の前では刺殺していた。　　　　　　　＊足立和雄：この記事の後には、阿羅健一「聞き書・南京事件」（図書出版社）に足立和雄（当時東京朝日記者）との「問答」が引用されている。　　　　　　　「．．．十四日だと思うが、日本の軍隊が数十人の中国兵を射っているのを見た。塹壕を掘ってその前に並ばせて機関銃で射った。」　2)　鈴木二郎（当時毎日新聞社会部・陸軍報道班員）「私はあの”南京の悲劇”を目撃した」＝「丸」昭和４１年１１月号　　　　内容：中山門付近城壁の上での刺殺、「功志社」の門での十余名のツルハシによる撲殺、城外の道路両側、揚子江下関付近の多数の死体など　3)　松本重治（当時日本新聞聯合社上海支局長）　　「「南京大虐殺」事件」＝「上海時代」（中公文庫、中公新書）　　　　　内容：（松本氏自身は１泊で帰ったので事件は目撃していない。）　　　　　　　松本氏は、元同僚の新井正義、前田雄二、深沢幹蔵の３氏に直接話を聞き、更に深沢氏の従軍日記を読ませてもらった。　　　　　　　三人ともが見たというのは、１２月１６～１７日に下関から草鞋峡の岸壁一帯の２、３千の焼死体、捕虜の刺殺（１２、３人目で気分が悪くなったので立ち去った）、軍官学校の拳銃による２人の捕虜射殺。　　　　　　　「軍隊として組織的にやったものとは信ぜられない」、戦闘以外の被害者は、「まず、１、２万というところではないか」ということであった。私自身も、戦闘終了後に南京城内あるいは城壁近傍で殺害された一般市民は数万程度であろうと思います。それ以外の大多数の人々は、紫金山、下関、草鞋峡、幕府山方面で殺害されたものと推測します。なお、石川達三は１２月２５日に東京をたち、南京着は翌年１月５日ですので「虐殺」を見る機会はなかったと思います。まだ、「町のなかにゴロゴロと死体がころがっていて、死の町という言葉がピッタリでした。」と述べています。（「生きている兵隊」（中公文庫）解説P205）軍人による、自ら殺害した、殺害するところを見たという証言は多数ありますので一部を紹介します。　1)「南京大虐殺を記録した皇軍兵士たち」（大月書店）は小佐野賢二氏が執念で日記を発掘したものです。（幕府山にいた捕虜の虐殺が明らかになりいました。）　2) 南京事件京都師団関係資料集（青木書店）　3)「南京戦史」（偕行社）の南京戦史資料集Ⅰ、Ⅱ 　4)奥宮正武（当時第一三航空隊・艦上爆撃隊指揮官）「南京大虐殺事件」＝「真珠湾までの五十年」（ＰＨＰ研究所）Ｐ３１２～３１８　　　撃墜された飛行機の搭乗員の捜索のため南京城内外を駆け巡ったときの貴重な目撃談がかかれている。虐殺は「統制のとれた行為」としている。　　「わたしの見た南京事件」（ＰＨＰ研究所）に同じ記事があります。（下記URLに掲載）　　　http://www5.tok2.com/home/JOHNVOID/doc_okumiya.htm 　5)井出純二（当時陸軍航空兵軍曹・飛行第八大隊付）「私が目撃した南京の惨劇」＝「増刊　歴史と人物　秘史・太平洋戦争」（中央公論社、昭和五十九年）　　　１２月２９日に南京入り、下関の鉄橋手前での日本刀による処刑、多数の遺体を目撃、漂着した遺体、「工兵隊らしき連中」がカギで遺体を沖に流す写真を撮影　6)村瀬守保（当時兵站自動車隊第十七中隊第二小隊、二等兵）「わたしの従軍中国戦線」（日本機関誌出版センター）　　　１２月末の下関の死体の山、工兵隊が死体を沖へ流す作業を写真撮影。（カメラアングルなど技術的にもすぐれた写真）井出純二氏は「私が目撃した南京の惨劇」でこう述べています。 -------------- 　日中両国、何百人の人間が、じかにその目で見ている”真実”を、いまさら「あった」「なかった」と争う愚はやめよう。 [「増刊　歴史と人物　秘史・太平洋戦争」（中央公論社）昭和五十九年、「私が目撃した南京の惨劇」P276] --------------