12402	返信	Re:南京大虐殺の基礎的な前提について -捕虜虐殺など	URL	渡辺	2002/01/06 03:59
これは、イシュさんの「12384 Re:南京大虐殺の基礎的な前提について、およびその他」2002/01/05 に対する返信です。 http://bbs2.otd.co.jp/mondou/bbs_plain?base=12384&range=1 イシュさん：＞ > > >虐殺行為が組織的である、という根拠はなんでしょう。公文書でも残っているんだろう > > >か？組織的というなら、参謀本部命令でもなければ「日本軍による組織的虐殺」にはな > > >り得ない。例えば部隊長の独断ならば部隊長個人の責任である。上位組織は管理不行き > > >届きでしか裁けません。 inti-solさん：＞ > > 第１６師団長中島今朝吾中将は、日誌に「大体捕虜ハセヌ方針ナレバ片端ヨリ之ヲ片付クルコトトナシタル(以下略)」と書いており、虐殺が師団長公認の方針であったことが明らかになっています。 > > 陸軍中将の、天皇親補職の、兵力１万数千人の長のやったことが、「部隊長の独断だから部隊長個人の責任である」とは、いくら何でも言えません。少なくとも、「第１６師団の組織的犯罪である」とは言えます。イシュさん：＞ > 中島中将の日誌からは虐殺命令とは限らないのではと思います。上海派遣軍参謀大西一大尉が「それは銃器を取り上げ釈放という意味」と言っています。虐殺が軍命令であったに違いない、だから「片付クル」は殺すという意味だったんだ、という論法ですが、この日誌を根拠に第１６師団が組織的に虐殺を行ったというのは些か決め付けのように感じられます。この日誌からはどちらが正しいか解かりえません。 inti-solさん：＞ > > ことは１６師団だけではありません。上海派遣軍の長勇参謀の「やっちまえ」発言による投降兵の殺戮など、虐殺全体が組織的である、と言わざるを得ません。イシュさん：＞ > これは上海派遣軍参謀長勇中佐自身が、「自分は事変当初通州において行われた日本人虐殺に対する報復の時機が来たと喜んだ。ただちに何人にも無断で隷下の各部隊に対し、これらの捕虜をみな殺しにすべしとの命令を発した。自分はこの命令を軍司令官の名を利用して無線電話依り伝達した。命令の原文はただちに焼却した。命令の結果、大量の虐殺が行われた。しかし中には逃亡するものもあって、みな殺しと言うわけには行かなかった。自分は之に依って通州の残虐に報復したのみならず、犠牲となった無辜の霊を慰め得たと信ずる。」と言っています。 > つまり彼のライン＝スタッフ制を無視した独断行動であり、命令する立場に無い一個人が勝手に組織を利用し報復を行った、こういった場合、虐殺は長勇中佐の個人責任であり、組織が正当な命令系統で行動できなかった事に関して、上海派遣軍司令官朝香宮鳩彦王中将には監督責任しか問えないのでは？組織的だと思いますよ。第一六師団中島今朝吾日記１２月１３日 --------------------------- 一、大体捕虜はせぬ方針なれば片端より之を片くることヽなしたるも、千五千一万の群衆となれば之が武装を解除することすら出来ず唯彼等が全く戦意を失ひぞろぞろついて来るから安全なるものヽ之が一旦騒擾せば始末に困るので部隊をトラックにて増派して監視と誘導に任じ．．．＜一部省略＞一、後に到りて知る処に依りて佐々木部隊丈[だけ]にて処理せしもの約一万五千、大[太]平門に於ける守備の一中隊が処理せしもの約一三〇〇其他その仙鶴門付近に集結したるもの約七八千人あり尚続々投降し来る一、此七八千人、之を片付くるには相当大なる壕を要し中々見当たらず一案としては百二百に分割したる後適当のヶ[カ]処に導きて処理する予定なり [偕行社「南京戦史資料集資料集Ⅰ」P220 よりカタカナ表記をかな表記にして引用] -------------------------- 第十軍第一一四師団歩兵第一二七旅団歩兵第六六連隊第一大隊１２月１３日戦闘詳報 -------------------------- 一三日午後二時零分連隊長より左の命令を受く旅団命令により捕虜は全部殺すへし其の方法は十数名を捕縛し逐次銃殺しては如何＜途中省略＞各隊共に午後五時準備終り刺殺を開始し概ね午後七時三十分刺殺を終り連隊に報告す第一中隊は当初の予定を変更して一気に監禁し焼かんとして失敗せり捕虜は観念し恐れす軍刀の前に首を差し伸ふるもの銃剣の前に乗り出し従容とし居るものありたるも中には泣き喚き救助を嘆願せるものあり特に隊長巡視の際には各所に其の声起これり [偕行社「南京戦史資料集資料集Ⅰ」P567-568 よりカタカナ表記をかな表記にして引用] -------------------------- [笠原「南京事件」（岩波新書）P154-155 と P156 にも引用されています。] 第一六師団歩兵第三十旅団歩兵第三三連隊に取材した、石川達三「生きている兵隊」より中島今朝吾日記の内容を支持する個所 -------------------------- （句容付近の追撃戦での中島師団[本文中では中島師団は高島部隊とされている]についての記述）「捕虜は捕らえたらその場で殺せ」それは命令というわけではなかったが、大体そういう方針が上部から示された。 [石川達三「生きている兵隊」中公文庫,1999年 P115]（「生きている兵隊」は昭和１３年中央公論３月号で発表されましたが、ただちに発禁になりました。） -------------------------- 「方針」はどこからきたのだろうか？一六師団長中島今朝吾の「上部」は皇族の朝香中将、その上は松井岩根大将。具体的な方針は中島今朝吾が出したと思われますが、第十軍でも同様な命令が出されていたので、上海派遣軍だけの「方針」ではなかったようです。中島今朝吾日記の記述からはさらに上部の方針とみられるので、中支那方面軍の総責任者松井岩根大将がこの方針を了解していたと考えざるをえません。 inti-solさん：＞ > 当時海軍大尉の艦上爆撃機搭乗員で、南京線で撃墜された部下を捜索していて虐殺現場に行き当たった奥宮正武氏は、「この一連の処刑は、流れ作業のように、きわめて手順よく行われていた。大声で指示する人々もいなかった。そのことから見て、明らかに陸軍の上級者の指示によるものであると推察せざるをえなかった。したがって、部外者である私が口を出す余地はないと感じた次第であった。」と書いています(「私の見た南京事件」PHP研究所) イシュさん：＞ > 「私の見た南京事件」という本、僕はまだ読んだ事はありませんが､処刑と虐殺は違うのでは？正規の裁判は経ていないでしょうが、中国の便衣兵ならば当然の事でしょう。誰を、どのように処刑したかによって結論は変わってきますね。上記の引用では解かりかねます。「正規の裁判」、すなわち軍律裁判などを経なければ「処刑」と呼ぼうと、国際法で禁止された捕虜の虐殺です。また、奥宮氏は、殺害されているのが兵士だとは言っていません。なお、南京にゲリラ（便衣隊）がいたとは思えませんが、仮にいたとしても、捕らえた者を軍律裁判などを行わずに処刑はできません。裁判のために、陸軍法務部というものがあります。勝手に兵の判断で処刑すれば、警察が裁判をせずに自分で死刑を執行しているようなものです。奥宮氏の証言はこちらにあります。 http://www5.tok2.com/home/JOHNVOID/doc_okumiya.htm ----- ＜一部を再引用します＞私は、この二目間に下関で見た合計約二十台分の、言いかえれぱ、少なくとも合計五百人以上の中国人の処刑だけでも、大虐殺であった、と信じている。もっとも、どれだけの被害者があれば大虐殺であるかについては、人それぞれに見解の相違があるかも知れないが。それらに加えて、玄武湖の湖上や湖岸で見た大量の死体のこととも考え合わせて、正確な数字は分からなかったが、莫大な数の中国人の犠牲者があったのではないか、と考えざるをえなかった。そうだとすれば、それは、明らかに、国際法上の大間題ではないかと思われた。が、当時の私には、そのことを突っ込んで検討する時間的な余裕がなかった。その後間もなく、私自身が作戦飛行に従事せねばならなかったからであった。 -----