12404 | 返信 | エルサレムのペルシャ絨毯 | URL | 水原文人@TelAviv, Israel | 2002/01/06 08:28 | |
イスラエルに来てすでに二週間近くになりますが、今日やっとエルサレムに行って来ました。世界有数の観光名所であるはずが、昨年9月より観光は死に体も同然。 土曜日はユダヤ教の安息日ですから、ユダヤ人経営のお店はことごとく閉店。しかし旧市街は大部分非ユダヤ人(イスラム教徒のアラブ人、アラブ人を含むキリスト教徒、そしてアルメニア人)地域であるため、開いている土産物屋・骨董屋はけっこうあります。ちなみにテルアヴィヴなどから来るガイドはたいていまずユダヤ人商店に客を連れていくため、アラブ人の店にはなかなか来てくれないんだそうです。 さてたまたま入った土産物屋、と思ったら本格的な骨董屋で、ペルシャ絨毯を売っていました。まぁ貧乏人の僕などには手のでない贅沢品……つたって日本で買えばン十万するものが値切れば700米ドルまで下がりました。あまりに商売にならないんで、売れるんだったらいい、という感じで。でも買わなかったけど(苦笑)。 なぜエルサレムの、ベドウィン出身者が経営するお店でペルシャ絨毯を売ってるのか? この理由が我々日本人のステレオタイプ的発想を完全に超越していて、出所はイラン系ユヤダ人のイスラエルへの移民者なんだそうです。裕福な人が多いらしいのですが、イランから移民するのに通貨の持ち出しを制限されているので、物品を持ち出してイスラエルで現金に変えるという。その商売相手が、ベドゥインなわけ。 ベドゥイン出身の店主、ってかなり若いと思いますが、いろいろ現在の情勢について話をしました。現在も進行中の第二次インティファーダのせいでパレスチナ人はイスラエル領内で仕事ができなくなり、エルサレムでも働けない。それで伝統工芸をエルサレムなので観光客に売ろうとするのだけど、9月以来観光客も来なくなった。「これを買うことで西岸やガザで飢えている人が助かる」なんて、ちゃっかりセールストークにしちゃうところが流石アラブ商人ですが、確かにモノがいいので、ベドゥイン族の手染めのテーブルクロスと、アルメニア人の作った陶器を購入しました。 ちなみにこのお店では、土産物としてユダヤ教の燭台も売っていたりして(笑)。 エルサレム旧市街はとにかく狭い。有名な嘆きの壁のすぐ向こうは、イスラム教の聖地である岩のドームです。聖墳墓教会の真向かいにはモスクがあるし。ムスリム地区をみるからにユダヤ教正統派の服装をした人が歩いているし。 ムスリム地区の角をひとつ曲がればキリスト教地区だったり、ユダヤ人地区だったり。 例のお店で買い物したら、サービスで店主の弟が旧市街を見るのにはもっとも眺めがいいオリーヴの丘に車で連れていってくれるわ、そのふもとのゲッセマネの園にも案内してくれるし、お客=友だち、で大変な持て成しぶりです。その後は店の専属ガイドが旧市街を案内をしてくれました。その前にで、旧市街見物で嘆きの壁に向かう途中、このガイド氏曰く「カナダの観光客が『ユダヤ人が嘆いているところに連れていって来れ』と言った。そこで連れていかれたのはどこだと思う? 税務署さ」と痛烈なギャグ。 冗談ではなく、イスラエルは膨大な国防予算のせいで税金は高いです。とくに観光で食べている人の多いエルサレム旧市街では、税金を払えずに家を差し押さえられるアラブ人が多いのだとか。そうした政府差し押さえの家やアパートは、玄関や窓にイスラエル国旗がぶらさげてあるのですが、そう言われて注意してみたら、けっこう多いのですよね。 別に人種差別政策を敷いているわけでもないのだけど、結果としてそうなってしまうようです。そしてインティファーダが盛り上がれば盛り上がるほど、実はパレスチナ人は困窮する。エルサレム旧市街で会ったムスリムはみんなインティファーダにうんざりしているし、アラファトには失望し、そしてもしビン・ラディンがニューヨークの事件の犯人だとしたら、ビン・ラディンはイスラム教徒じゃない、とさえ言っています。 元から三つの宗教が共存しているのだから、今後も共存できないわけがない。そんなことで凝り固まって戦うよりも、人生を楽しむべきだ、みんな同じ人間なんだし、というようなことを誰もがいいます。一方でシャロンに政権を与えてしまったイスラエルのユダヤ人には正直失望した、という声もありました。それでも平和は可能なはずだ、と。 さてテルアヴィヴに戻る乗り合いタクシーでは、フィリピン人の女性と隣り合わせになりました。一年前からイスラエルに住んで働いているそうです。しかもおじいさんが日本人との混血なのだとか。すごい偶然。 いやはや、グローバリゼーション♪ しかしそれにつけても、イスラエルの労働ヴィザを取るのは簡単なんだそうで、それに較べてエンタンテイメント(要するに性風俗か)に従事する人ぐらいにしかヴィザを出さない、極めて排外的な移民・移住政策をとる日本が恥ずかしくなりましたね。しかもいわゆる左翼政党でさえ、いわゆる外国人不法労働者の合法化とか最低限の権利の保障 をまったく語ろうとすらしない日本の政治って…… それにしても、現実はニュースなので感じることとは懸け離れていて、遥かに複雑です。イラン系ユダヤ人が持って来たペルシャ絨毯を、ベドゥウィンがアメリカ人に売るという…… |
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