12935 | 返信 | 田中正明「松井岩根大将陣中日記」の改竄について | URL | 渡辺 | 2002/02/09 18:19 | |
田中正明「松井岩根大将陣中日記」の改竄について 今更とも思われる、田中正明「松井日記」改竄事件をとりあげるきっかけになったのは、下記のような記事を今年の初めに見つけたからです。 http://www.jiyuu-shikan.org/goiken/99/goiken9911m.html に、田中正明「「松井大将日誌」について、こんな記事があります。 ----- 田中さんの「松井大将日誌」には誤りが多いと言うことを指摘したのは、板倉由明氏 でした。「歴史と人物」(昭和60年冬季号)で、草書体で読みにくい原文の判読に不 正確なところがたくさんある、というもので、決していわゆる「改竄」したというもので はありませんでした。 ----- おそらく、この文章を書いた人は「歴史と人物 60年冬号」を読んでいません。そうでなければ、史観云々以前の問題として知的誠実さに欠けるといわなければなりません。 板倉由明氏は「誤りが多いと言うことを指摘」したばかりでなく、「悪質な書き加え」を含む「改竄」であると断じています。 まず、その記事の題名とキャプションは下記のようなものです。 ----- 松井岩根大将「陣中日記」改竄の怪 日中戦争研究の第一級資料の活字本は、かくも原 資料と異なっている――近現代史研究者への警告 (P318) ----- 板倉氏は、初めて芙蓉書房の「松井日記」と「原本」を「歴史と人物」の編集室で見比べたときのことをこう記述しています。 ----- 編集室の一隅で史料を見せられたときは、息の詰まる感じであった。目の前に並んだ自衛隊の坂妻駐屯地資料館蔵の「松井日揮原本」(コピーならびにかなりの数の写真版)と、芙蓉社版・田中正明編『松井岩根大将の陣中日誌』第四章収録の「日記」との間には、見過ごすことのできない大きな差異が、それも単純ミスではない明らかに意図的な改竄がいくつも認められたのである。 かねてから、いわゆる「南京虐殺事件」の研究にとりくんでいた私は、今まで気づかずに何度も田中氏編の松井日記を使って評論してきただけに、このショックを忘れることができない。 (P318) ----- この後、板倉氏はなぜショックを受けたかを書いています。それは「日記」が「南京事件解明の第一級資料として各方面から非常に期待され」たが、この「日記」には肝心な部分の欠落が多く「戦後の改竄か意識して(不愉快なので)書かなかったのか、いずれにしても『無い』ことがかえって何かを暗示している」(P319)と板倉氏は考え、松井大将自身が東京裁判対策として日記の一部を消したのではないかと疑っていたからです。 板倉氏は、そのときこのように結論しました。 ----- 最後まで目を通した私の結論から言おう。発見された「改竄」は、脱落だけならまだしも「書き加え」まであり、しかもそれらはすべて「南京事件否定」の方向で行われている。これは明らかに編者・田中氏の意図的行為であると断ぜざるを得ない。 (P319) ----- 板倉氏によれば、意図的なものから、全体に大きな影響のない送り仮名・漢文表記まで含めると、「その異同はおよそ九百ヵ所以上に及んでいる」(P322)としています。 322頁から331頁にかけて、解釈に影響のある個所が指摘されています。なお、12月23日の「悪質な書き加え」について板倉氏は「支那事変日誌抜萃」の記者会見をもとにしたと推測していますが、これは「支那事変日誌抜萃」で11月30日の記事を12月23日にずらせて削除・加筆し、それを更に書き改めたものであることが現在では判明しています。[洞富雄「南京大虐殺の証明」(朝日新聞社,1988年)P221] 板倉氏の記事を読んで、『決していわゆる「改竄」したというもので はありません』と、どういう神経で言えるのでしょうか。 ところが、自分の不勉強か、そうでなければ不誠実を棚にあげ、「改竄」は「朝日新聞がでっち上げたプロパガンダ」と全く見当違いのことを言っています。 ----- 結論的の申しますと、「松井大将日記改竄説」は朝日新聞がでっち上げたプロパガ ンダであり、田中さんの主張の当否とは全く関係がありません。なぜなら、田中さん は、「改竄」などしていませんし、そもそも「松井日記」は南京虐殺問題の重要ポイン トにはなっていません。 ----- 「南京虐殺問題」否定論の「重要ポイント」として「"南京虐殺"の虚構 松井大将の日記をめぐって」(日本教文社,昭和59年)で「日記」を利用していたのは田中氏本人であったのです。 こんな、最近のできごとでさえ資料にもあたらず、間違ったことを自信たっぷりに書いているとは...学校では、こんな先生たちに歴史教育を受けている生徒もいるのでしょうか。 |
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