14163 返信 Re:船橋市立西図書館の件。 URL おっちゃん 2002/05/12 16:11
mikimamiさん、

>松村氏の著書は名誉毀損だとか、そのような「類」の本は置いておけないなと感じたとしても、節操の問題とは言えないのでは?

以前、某所での「人権問題」の議論のために苦労して私が入力した「資料」です。(まる写しですが)
参考としてごらんください。
公共図書館では蔵書のなかの「問題」のある書籍についてはこのように検討の経緯やその後の処置について記録され、公開されています。
一司書の判断で特定の書籍を廃棄するとか、その経緯が不透明(責任者が説明できない)とかはおこり得ないことですね。

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豊中市立図書館人権問題資料関係年譜

昨年発行された「資料集・豊中の図書館50年」(豊中市立岡町図書館発行)という
出版物のなかから人権問題に関係する書籍・資料ということで検討されたもの一覧の
記載部分を抜粋しました。図書館の対応がこれで十分であるかどうかの議論は残るで
しょうが、一地方自治体の図書館の取り組みとして参考になるかとも思います。

なお、原文は縦3列の枠欄の対照表形式で記載されていますが、入力の都合で各項目ごとに『書名・出版社等』、
○問題点等、◎検討結果・処置方法等、となっております。

誤入力のないよう注意を払いましたが、誤字・脱字等がまぎれこんでいるかも知れま
せん、ご容赦ください。


豊中市立図書館人権問題資料関係年譜

昭和49(1974)年 -----------------------------------------------------

『ドレミファ談義』高木東六著
○「それは特殊部落のような貧民窟で行儀の悪い…」という文章表現があり、利用者(市職員)から指摘を受ける。
◎ガイダンスは配布およびカウンターで貸出の際、職員が説明(後、ガイダンス添付)

『日本十進分類法』7版
○378.9→379.9 316.36「特殊部落」削除等
◎日本図書館協会の通知に準拠

昭和53(1978)年 -----------------------------------------------------

『豊中市史』
◎『市史』の寄贈を市に求めた際、市より、内容の一部に「不適切な部分がある」との指摘を受けている経緯があるので、禁貸出、一部頁の複写禁止の条件付で認める旨通知があり、寄贈を受けた。

昭和54(1979)年 -----------------------------------------------------

『現代用語の基礎知識78年度版』
○「圧力団体のタブー」という解説記事で部落解放同盟の項の記述が差別でないかとの指摘(広大生協理事会報告より)
◎岡町図書館は新版に買換。庄内、千里図書館はその上にコピーを貼る。

紙芝居『くろいいぬ』
○『みんなの図書館』より「いぬごろし」という表現が職業差別につながる。
◎小中学生室担当で話合。古いので廃棄など様々

『ハイジ』
○メクラ、不具者という言葉が使われている等
『ピノキオ』
○名古屋図書館での指摘。
◎小中学生室担当で話合。全体として差別性は感じられない。いろいろな意見が出たが今までどおり古典物として提供してゆく。

昭和55(1980)年 -----------------------------------------------------

『かわいいみんなのあそび』かこさとし著
○大阪市従業員労組より指摘があったとの新聞記事より 「くみとりやさんがクーサイ、クーサイ…」等の表現
◎同教主担者協議会等で決定 ガイダンスが適当だが、館として読み手(幼児・児童)の理解力に責任が持てず除籍。新版購入(出版社が改訂)

『海軍よもやま物語』小林孝裕著
○’85.5.19付解放新聞より。「特殊部落」という表現の差別性を指摘。
◎同教主担者協議会等で決定 ガイダンス貼付で開架

『子ども会ハンドブック』
○版元、府教委より回収依頼
◎所蔵せず

昭和56(1981)年 -----------------------------------------------------

『将軍』下巻 TBSブリタニカ
○版元が回収との新聞記事 差別用語で広島県木江町教委から版元へ要望書
◎回収交換に応じる

郷土古文書
○旧戸籍関係資料
◎解読の先生、同和教育室と協議。利用制限資料とする。

昭和57(1992)年 -----------------------------------------------------

冠婚葬祭関係図書
○府教委より調査依頼 「身元調査」の内容調査
◎ほとんどすべての資料に「身元調査」の記述あり ガイダンス貼付で開架

『なんで山登るねん』山と渓谷社
○「在日韓国・朝鮮人を差別する不当な記述…」との新聞報道より
◎版元では増刷分からは記述を削除、在庫は処分 館としては増刷分を買換

角川書店版『漱石全集』・角川文庫『坑夫』
○版元より「差別的表現についての訂正とお願い」の通知
◎豊中市に該当書なし

『日本名所風俗図会』角川書店
○版元より「差別的表現についての訂正とお願い」の通知
◎版元作成のガイダンス貼付

『兎の眼』灰谷健次郎著
○堺市図書館資料より 他に6点ほど討議資料が掲載されている
◎昭和56(1981)年9月より版元で削除と判明。買換

昭和58(1993)年 -----------------------------------------------------

『豊中市史』(再)
○参考資料室より複写禁止箇所の利用者対応がむずかしいとの声あり
◎課内研修資料とする

『住居表示旧新対照表』『住居表示概要』『住居表示概要・資料』『豊中市大字区域図』『豊中市精密住宅地図』
○雑誌『部落解放』’82/12号「新住居表示表」(「部落地名総鑑」)差別事件の記事より 同和対策部、土木部などと協議
◎『対照表』は原簿の一部と思われるものが図書館にあった。不要として廃棄。
 『概要』は直接差別につながらず公開。
 『資料』は直接的に地域が限定されるので利用制限。
 『大字図』は当初制限資料としたが、後解除。
 『住宅地図』は最新版以外は制限したが、後、新住居表示のものは解除。

昭和59(1984)年 -----------------------------------------------------

『竜馬がゆく』司馬遼太郎著
○『解放新聞』1/23付より 「ちょうりんぼう(馬鹿め)!」の記述
◎著者が賎称語の使用について陳謝。改訂版の出版の際に買換

『大阪空襲体験記』
○当館への寄贈図書。「第三国人」等の表現
◎著者の見解を求めようとしたが果たせず。保留

『見愛って見愛ってきんらんどんす』『結婚の辞典’85』
○身元調査を勧める記述
◎2点とも「批判的に読んでほしい」旨のガイダンス貼付

『ことばとあそぼう』フレーベル館
○「アッ!いぬ」というイラストあり
◎児童書なのでガイダンス添付に適さず廃棄

『ことば遊び辞典』
○差別語多数
◎新版所蔵館で改訂を確認 旧版所蔵館は買換

『捜査一課長』清水一行著
○甲山事件を素材。犯人が保母という筋書き。
◎「フィクション」との明示があり、民事訴訟もないので開架と決定。

『トランプあそび』筑摩書房
○『解放新聞』12/24付より 大貧民ゲームに対する指摘
◎買換

昭和62(1987)年 -----------------------------------------------------

『あやしい手紙』あかね書房
○公共図書館司書が第三者に利用者の住所・氏名を教える記述あり。
◎「図の自由宣言」ポスター掲示。出版社への質問状送付。巻末に注をつけるとの回答あり。貸出制限はせず。

『原爆と差別』中条一雄著
○版元より「部落差別意識を助長・拡大する内容の記述がある」ため、回収・交換したいとの依頼あり
◎その時点で岡町図のみ所蔵。新版と交換。豊中独自のポスターを検討。

『人間の歴史の物語』岩波書店
○大阪声のグループより「めくら」「つんぼ」等の用語が音訳の際不快であるとの指摘
◎出版社等に指摘し、改訳を要望する。音訳テープに「すべての表記について原文のまま読んでいます」の意の文を最初に吹込む

平成元(1989)年 -----------------------------------------------------

『グラフとよなか』
○広報グラフ紙に差別地名の入った古地図(図書館所蔵)を掲載・配布
◎従来の取組の再点検。「資料利用制限に関する内規」を作成、新たに「人権問題対策委員会」を設置等。

『長崎市長への七三〇〇通の手紙』径書房
○「差別助長の手紙掲載」と解放同盟抗議との新聞報道より
◎双方の見解を付加した増補版を購入。旧版は書庫に保存。

『報道写真家』桑原史成著
○「食肉市場への差別表現で岩波が新書を全面回収」との新聞報道より
◎新版との交換に応じる。旧版は一部書庫に保存。

『ちびくろさんぼ』岩波書店他
◎当館の当面の結論は… 資料利用制限内規には該当させない、小中学生室に別置、ガイダンスを添付 利用の対象は高校生以上、新聞記事等の資料集を作成、市民も含めた研修会をもつ …等に決定

平成2(1990)年 -----------------------------------------------------

『日本権力構造の謎』早川書房
○解放同盟についての記述が誤解を招くとして解放同盟が抗議。2刷以降に出版社発行の小冊子をつけることで合意。
◎小冊子を旧版につけて貸出す。一部は小冊子と共に保存。

「サンリオキャラクターもの」
○黒人に対しての画一的・固定的なイメージを与える。
◎一冊は保存。他は代替本で間に合うので除籍。

平成3(1991)年 -----------------------------------------------------

『ひろすけ童話紙芝居全集第一集・ある島のきつね』
○版元より障害者の呼称が不適切として、差替依頼あり。
◎旧版一部保存。

平成4(1992)年 -----------------------------------------------------

『マンボウVSブッシュマン』北 杜夫著
○「黒人差別」と絶版との新聞報道より、表紙のイラストが指摘される
◎一冊は保存。文庫本は表紙を変えて出版された。

『だから私は嫌われる』ビートたけし著
○上記と同じ記事中に「同和問題が怖いもの、あるいはタブーというイメージを持たせる表現」として偏見を助長するとの指摘あり
◎結論出せず、経過を見守ることとなった。

『大阪の民謡』右田伊佐雄著
○「チュウレンボウ」という語が被差別者を指すかどうかという議論あり。
◎「長吏」説の提唱者も「想像」と述べており、今のところ特別の処置はとらない

『図解・世界のゲーム大事典』『おもしろクイズ教室・社会』3〜6年生
○表紙の黒人の挿絵が固定的なイメージを与える
◎サンリオキャラクターものと同様の扱い

『ババールのしんこんりょこう』評論社
○「ひとくいじんしゅ」
◎出版社に文書で問合せ(未回答)

『ウサギどんキツネどん』岩波書店
○「くろんぼ」という表現が多出。人種起源譚。
◎出版社に文書で問合せ(未回答)

『世界のむかし話・北米』ほるぷ
○人種起源譚。
◎出版社に文書で問合予定

紙芝居『三つのたから』
○「くろんぼ王」という表現。「偏見を除くねらいで」脚色したとの解説あり。
◎継続協議中

『カラオの洞窟』小峰書店
○『週刊読書人』に「差別に無頓着な翻訳民話」の例としてあげられた。
◎人種起源譚だがとくに差別を助長するとは思われないとの判断

『チョコレート工場の秘密』評論社
○「ピグミー」の表現に疑問
◎議論がわかれた。とりあえず開架。

『人間の運命』芹沢光治良著
○「特殊部落」という語が出てくる
◎現在書庫中。希望者へのガイダンス検討中。

『グリム童話集4』偕成社文庫
○『イバラの中のユダヤ人』ユダヤ人蔑視が問題になった
◎昔話ができた当時の偏見を残しているのは仕方がないとの判断

『探訪日本の城6・近畿』
○目次に「穢多村」の載った地図あり
◎制限資料にするかどうか対策委員会へ

『こんな治療法もある』遠藤周作編
○当館利用者から「出版社に聞くと絶版にしたとのことだが、他の人も被害に会うといけないので」と電話あり。
◎版元は図書館で出回っていることに気付かなかった。善処するとのこと。事情をそのまま書いた文章とともに書庫入。後、ガイダンス作成に決定。

『ドリトル先生アフリカゆき』岩波書店
○黒人の扱いが問題だと以前から指摘あり
◎出版された時代の偏見が反映された部分がみられるが、評価の高い作品。人権感覚の新しい作品を収集していくしかない。

『めくらぶどうと虹』宮沢賢治著
○「めくらぶどう」は「のぶどう」の方言
◎書名が子供に与える影響が心配だが、開架とする

『バブルエコノミー』共同通信社
○「事実に反する翻訳があり…名誉を著しく侵害し」たとの新聞公告より
◎一冊は保存、一冊は交換

『B型肝炎殺人事件』
○「感染経路について誤解を招くような記述があるとする患者団体の指摘を受け」たとの新聞報道より
◎一冊は書庫に保存。関連記事を添付して貸出す。他は廃棄。

『ぬいぐるみと人形』学研
○「ラグドールくろんぼマミー」人形の写真あり
◎サンリオキャラクターものと同様

平成6(1994)年 -----------------------------------------------------

『ドレミファ談義』 冠婚葬祭の本
◎ガイダンス添付に変更 身元調査を奨励したものについては、すべて共通の添付資料をつけた。

『風神の門』司馬遼太郎著 新潮社
○「穢多ヶ崎」という地名が出てくる。(単なる古地名であり、プライバシーの侵害にはあたらないが、一般の読み物なのでどう考えるか)
◎野畑図書館に一冊保存。他は地名を変えた改訂版と買い換える。

『コンパクト新日韓小辞典』『コンパクト新韓日小事典』三修社
○「白丁」(ペクチョン被差別民)の訳語に「えた」「よつ」という差別語を用いている。*高麗書林の日韓小事典では「よつ」=「白丁」としているものあり。*白帝社は改訂し、無料で回収・交換に応じる。
◎野畑図書館書庫にて一冊保存。三修社に問い合わせる。高麗書林は「在庫がなくなってから改訂する」という対応。

『お話童話宝玉選』『日本童話宝玉選』『世界童話宝玉選』
◎89.4.3の小中学生室連絡会にて論議。小学館より文書にて『めくら』などの差別用語、「障害」を笑いものにしている仏教の『業』思想による差別、などの理由により書店から回収・絶版にした由通知あり。野畑書庫にて一冊保存、他は廃棄。

『わすれんぼうのサンタさん』(紙芝居)
◎「…きちがい」という言葉が出てくる。電話で問い合わせたが出版社としての見解をきけなかったので文書にて問い合わせる。 注:95年対策委員会にて再検討を指示。

『実用ことわざ慣用句辞典』(三省堂)ほか
◎「めくら」を用いたことわざ数点あり。昔からのことわざは古い因習を引き継いでいるが消し去るわけにはいかない。ことわざ辞典類には全てガイダンスを添付する。(該当箇所を付記または例示)野畑作成のガイダンス案を対策委員会に提出、判断をあおぐ。(該当箇所を付記あるいは例示する。元号と西暦を併記する)

『豊中市史・資料編』4
○場所の特定ができる地名や差別用語が多く出る。
◎制限資料なので閲覧許可が必要。

「特殊教育」の件名
○古い図書に「特殊教育」の件名のついたものがある。
◎「障害児教育」に訂正する。

『キッチンアイディア工作』『小学生のたのしい工作教室2』
○黒人のステレオタイプの載ったカット集等は、廃棄しても同様のものが出版される。
◎「図書館では○○の理由で蔵書としない」旨を通知する。

『ウサギどんキツネどん』岩波少年文庫
◎復刊分の巻末に「くろんぼ」について注記がついた。

『ババールのしんこんりょこう』
◎問い合わせに回答なし。再度問い合わせを行なってはどうか。

『足はなんぼん?』板倉聖宣著 国土社
○「かたわになったかわいそうなひと」という記述あり。
◎国土社に文書にて問い合わせる。

紙芝居『三つのたから』
○「くろんぼ王」が白人の姫と結婚しようとするのが「とんでもない」ことであり「姫を救い出す」筋書きになっている。絵はステレオタイプ
◎野畑書庫にて一冊保存。他は廃棄。

『ぞうのはなしはよしてくれ』
◎「しゅうちょう」という語は古いイメージがあり、ウタリ協会が抗議した事例もあるが、必ずしも差別語とはいえないのではないか。また絵はアフリカの服装等かなり正確に描いているのではないか。

『マガーク少年探偵団』
◎以前問い合わせたときには「後記に注記する」とのことだったが91年29刷にはなし。人権問題資料ではなく「図書館の自由」に関する問題なので、この委員会では特に処理しない。 注:1995年5月対策委員会では、プライバシーの保護の観点から、委員会扱いに決定。

『北の人名録』倉本 聰著
○「アイヌが犬を食用にした」という記述が誤解を生じさせるとして書店より回収・改訂版発行。
◎図書館雑誌94−3月号に記事あり。次年度検討する。

『アイヌの学校』
○アイヌに対する偏見に満ちているとしてウタリ協会が抗議。絶版、書店より回収。
◎朝日新聞94−3.11参照 次年度協議する。


(以上)