30088 返信 南京事件 初歩の初歩 URL 曽田 2004/10/14 22:21
はじめまして。曽田と申します。過去に常盤津、ターンエーのHNで投稿したことがあるのですが、今後は本名の苗字を使用します。よろしくお願いいたします。

今回の本宮ひろ志氏の件は、媒体が漫画ということもあっていろいろな人が興味を持たれているようです。ただ、中には最低限の勉強もしないままネットで拾い集めただけの中途半端な知識で投稿されているとおぼしき方がいらっしゃいます。固定HNの方々にはいささか食傷とは存じますが、最低限以下の事実は抑えておくべきと思います。

「南京には20万人(安全区国際委員会調べ)しかいなかったから30万人殺すのは無理」という論法
「中国では犠牲者数30万人、笠原十九司氏は20万人、その他ばらばらな説が存在しているのが、事件がなかった証拠」という論法

ポイントは南京安全区と南京行政区、あるいは南京市の違いです。いわゆる南京事件は日本軍(主に上海攻略戦を完了した部隊)が南京陥落に向かう過程を含んでいるとされています。上海派遣軍を含む中支那方面軍が400キロ近い三つのルートで南京城に向かったことはご存知と思います。笠原氏はこのルート上(つまり南京行政区を含む)で行われた虐殺も「南京事件」として扱っているわけです。中国側もこのルート上での虐殺を否定しているわけではなく、「南京市」での犠牲者を「南京大屠殺」と呼んでいるに過ぎません。
南京行政区はいくつかの「県」が合わさった区域で、面積的な比較で言うと東京23区に埼玉県を加えた面積をさらに上回ります。
国際委員会の「20万人」報告書は南京安全区(面積的には板橋区に近い)の調査をもとに推計したものです。
南京行政区>南京市>安全区 というわけです。稚拙なアナロジーで申し訳ないが、岡山県、岡山市、岡山市街の人口を同列に論じるのは無理があるよ、ということです。
付け加えるなら、安全区国際委員会は人口調査のほかに、日本軍の蛮行についても記録を残しているのですが、否定派のみなさんは「20万人」の部分以外はすべてスルーされているようで。

論者によって人数が異なるのは、前述の範囲のとり方の違いと、事実を過小に見せたがる論者の存在によります。事件そのものの不存在を立証しようとして論理の袋小路に陥った人が事実を過小に見せたがる手段に出たのですが、論理的には失敗しています。

南京大虐殺については事実をめぐって論争があるかのように報道するメディアもありますが、実のところ本質的な部分での論争はとっくの昔に終わっています。論争があるように見えるのは、すでに破綻が明らかになった論理を何事もなかったかのように主張している人がいるに過ぎません。

以上の事実はちょっと本腰をいれて勉強すれば分かることです。歴史上の定説に疑問を抱くこと自体は素晴らしいことですが、本もろくに読まずに反対側の結論に飛びつくべきではありません。