30254 返信 ご参考までに(すべてコピペです) URL gaji 2004/10/21 20:01
【”「正規の軍事裁判」なしの便衣兵の処刑”の国際法上の評価】=========

「便衣隊の処刑には、正規の軍事裁判が必要であったのであり、従って、それによらない処刑は国際法違反の虐殺である」といった旨のものです。
        ↓ 
まず、条約であるが、1907年の「ヘーグ条約」、1929年の「俘虜の待遇に関する条約」(日本は批准しませんでしたが)、さらに、「南京事件」後、1949年の「捕虜条約(ジュネーブ第III条約)」にも、これら(捕虜となる資格を有しない)ゲリラや便衣兵に対する処罰の手続きに関して明文の規則はない。
        ↓
「南京事件」当時の条約には、非特権的交戦者の処罰の手続に関して、正規の軍事裁判が必要とされるといった明文の規定は見い出せない。
        ↓
では、慣習国際法ではどうであろうか。
        ↓
「ゲリラや便衣兵などの非特権的交戦者の処罰・処刑には、正規の軍事裁判が必要である」という慣習国際法が、当時、形成されていたかどうか
        ↓
「Lieber Code」(陸戦の法規・慣例に基づく軍隊の守るべき規則、1863年)では、
組織化されず、軍服も着けず、戦争に継続的に参加するものではなく、様々の方法で敵対行為を行う者またはその分隊は
「公の敵ではなく、それゆえ捕えられれば、捕虜の特殊な資格を有せず、公道での盗賊または海賊として”即決処分されねばならない”」(82条)(『国際人道法』藤田久一、13頁)
        ↓
戦争というのは、勿論、国(公)と国(公)との戦いである。すなわち、敵兵士というのは(個人的な敵ではなく)あくまで「公の敵」なのであり、その兵士「個人」に恨みがあるわけでは決してない。従って、捕獲されて(戦闘という観点からは)公との関係が断たれた兵士すなわち個人は、捕虜として遇されるべきである。しかし、便衣隊やゲリラのごとき交戦資格を有さない者は、もともと「公の敵」とはみなされず、さらに、その戦法の卑劣さ故に「個人的」な恨みをかうことになる。だから、「盗賊または海賊」とみなして「即決処刑されねばならない」と明文で規程されているのである。
これは、便衣隊やゲリラの問題を考えるときに、決して忘れてはならない視点である。
        ↓
1874年に開催された「ブラッセル会議」では、その討議においてロシアは以下のような提案を行っている。
「第一  軍隊の他左の条件を具備する民兵及び義勇兵は交戦者たるの資格を有す。(一)責任を負ふ者その頭にあり且本営よりの指揮の下に立つこと、(二)遠方より認識し得べき明瞭なる或徴章を有すること、(三)公然武器を携帯すること、(四)交戦の法規、慣例、及び手続に従つて行動すること。以上の条件を具備せざる武装隊は交戦者たるの資格を有さざるものとし、之を正規の敵兵と認めず、”捕へたる場合は裁判に依らずして処断するを得。”」(””は筆者注)(『上海戦と国際法』信夫淳平、118頁)

最後の「以上の条件を具備せざる武装隊は交戦者たるの資格を有さざるものとし、之を正規の敵兵と認めず、”捕へたる場合は裁判に依らずして処断するを得”」に注目していただきたい。非特権的交戦者に対しては、裁判なしで処刑することを認めているのである。
すなわち、便衣隊というのは、この規定に従えば、”裁判によらず”処断されえるということになる。
        ↓
前回述べたように、「南京事件」以前には、「正規の軍事裁判によらない、便衣隊・ゲリラの処刑・処罰」すなわち「即決処刑・処罰」を実際に行っていたのであり、法律、条約の準備書面、国の正式機関による布告(もちろん、軍隊は国の正式機関である)に実際にそう載っているのである。
        ↓
もし、「南京事件」当時、「正規の軍事裁判によらない、便衣隊・ゲリラの処刑・処罰は違法である」との慣習国際法が形成されていたなら、「南京事件」以後は、そのような行為は行われていない筈であり、もし例外的に行われていれば、国際的に、即ち(当事者と利害関係を有さない)他国による正式・公式な行為、意思表明といったものによって徹底的に糾弾された筈である。
        ↓
従って、もし「ゲリラや便衣兵のような非特権的交戦者は、正規の軍事裁判を経た後でなければ処罰・処刑できない」という『法的信念』が、「南京事件」当時、国際的・普遍的に形成していたとすれば、1949年の「ジュネーブ条約」でこのことが明記されたはずである。しかし、実際は、ベトナム戦争という惨禍を経験して初めて、1977年の「追加議定書」に明記されたのであり、それについてさえも幾多もの国が批准を拒否したのである。

その背景には、勿論、ゲリラ戦術を多用する共産主義勢力への警戒というものがあったであろうが、ゲリラ戦術そのものに対する嫌悪・憎悪がつよかったことは想像に難くない。現在は未批准の国は除々に減少してきてはいるが、これは、共産勢力の没落とともに共産主義的暴力革命の可能性、即ちゲリラ戦が大々的に展開される可能性が減少したことと無関係ではあるまい。

http://www.interq.or.jp/sheep/clarex/jusinbello/jusinbello13.html
http://www.interq.or.jp/sheep/clarex/jusinbello/jusinbello14.html
http://www.interq.or.jp/sheep/clarex/jusinbello/jusinbello15.html        
http://www.interq.or.jp/sheep/clarex/jusinbello/jusinbello16.html
==================================================