32695 返信 ローマ字表記について/東アジア諸言語の協力へ向けて/国際標準化機構 Re:神社新報社に爆笑/日本語表記法について Re:tpkn殿へ Re:正假名遣ひ、正字體を輕視し、莫迦にするキララ殿へ URL 森永和彦 2005/02/04 02:11
> ヘボン式ローマ字は、徹底した学問的批判により退けられ、1937年に「訓令式」が内閣告示として定められた。しかし、GHQの強い圧力により、文部省は1948年に「ローマ字調査会」を設けてヘボン式を復活させたのである。
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> また、国際標準化機構(ISO)では、各国の専門家による周到な審議の末に、ヘボン式を退け、1989年に訓令式を国際規格として決定したのである。いまだにヘボン式を使っているのは論外である。

国際標準化機構が採択したローマ字表記法は、ここに載っている。

この表記法は、ヘボン式よりあらゆる点ですぐれていることは言うまでもないが、欠点がないわけではない。私はこの表記法にいくつか批判を持っているのでそれを述べる。

(1)撥音(ん)の表記

国際標準化機構が決定した表記法では、撥音(ん)を n で表記することになっている。しかしこれは問題である。ナ行子音も n であるから、別の音素を同じ文字で表すことになってしまう。そのため、「ん」の次に母音などが来る場合に分離記号が必要になってしまうのである。

これについては、ローマ字26文字のうち日本語で使わない文字のどれか(x など)を使うということも考えられるが、私は ŋ が最適だと考える。ローマ字26文字のうち日本語で使わない文字のどれか(x など)を使えば、外国人にとって発音が難しくなりすぎるので避けるべきである。

撥音(ん)の発音は [n], [m], [ŋ]の3種類である。nはナ行子音、mはマ行子音で使うから、残るは ŋ である。
そもそも ŋ がアルファベットの中に含まれていないことに問題があるのである。英語だって/ŋ/がある。ほとんどの人は英語辞書で見たことがあるだろう。 ŋ がないために、ng という表記が広く使われている。この板にいる송(Soŋ)さんも、"Song"と署名している。しかしこの表記は欠陥がある。1音素を2文字で表すことは不正常であり、読みにくい。

たとえば동아일보(東亜日報)のドメインはdonga.comとなっている。もちろんdong/aなのであるが、予備知識がなければdon/gaと読んでしまう人も多いであろう。 ŋ は必要とされる文字であり、日本語がこれを使うことに不都合はない。

これは東アジア諸国の協力にも役立つ可能性がある。朝鮮語・中国語・Vietnam語などいずれも/ŋ/を持っており、 ŋ がアルファベットに加えられることを支持するに違いない。日本語も ŋ を使い、東アジア諸国が協力して ŋ の地位を高めていこう。

(2)促音(っ)

国際標準化機構が決定した表記法では、「っ」はその次にくる子音を連続させることで表すことになっている。
たとえば、「あった」は atta となる。しかしこの方法には重大な欠点がある。「っ」で終わる場合の表記ができないということである。たとえば「あっ」「えっ」などは良く見かけるが、これをローマ字に転写できないのでは困る。

「あっ」「えっ」などの場合は、「aq」「eq」のように、「っ」を q であらわすのが普通である。であるならば、あらゆる場合に「っ」を q であらわせばよいのである。規則は少なければ少ないほどよいのだから、「次に子音が来る場合はその子音を重ね、来ない場合は q と書く」よりも、「常に q と書く」のほうが良いに決まっている。促音は常に q と書くべきである。

(3)長音

国際標準化機構が決定した表記法では、長音は字の上に記号をつけてあらわすことになっている。

Â Î Û Ê Ô のようになる。

しかしこうするよりも、長音記号を単独文字としたほうがよほど便利である。

現在の方式では、母音にAIUEOÂÎÛÊÔの10文字が必要となるが、長音記号を単独文字とするとAIUEO+長音記号の6文字ですむのである。パソコンで使うにも便利であるし見やすい。字上の記号は、中国語のような声調言語には合っているが、長音記号にはふさわしくないと思う。日本語では「ー」として長音記号を独立させてきたし、これは日本語以外の言語にも汎用性があって便利である。一部の言語には「超長音」というものが存在するが、これも長音記号を二つならべることで簡単に表記できる。

長音記号として使う文字は、すでにIPAで使われているものがあるが、これはコロンと紛らわしいので避けて、"を使えばどうか。


(4)ヤ行子音

ヤ行子音は、y とされているが、これは明らかに j のほうが良い。IPAにあわせるべきである。
ヤ行は ja ju jo である。


(5)ラ行子音

ラ行子音は、r とされているが、 l のほうが良い。

日本語には /r/ と /l/の区別は存在しないので、どちらでも良いのだが、世界の諸言語を考えた場合、lのほうが発音の幅が極めて小さい。rは強い巻き舌音であったり、母音/半母音であったりするのである。スラヴ人の知人がいたらHrvatska, Srbijaなどの語を発音してもらって確かめよう。rの音の多様性は非常に大きい。よってlのほうがよい。

これは中国語との関連でもいえることである。中国語にも /r/ と /l/の区別は存在しないが、中国語(ピンイン)ではlを当てている。rはまったく別の音である。よって中国語との共通性を考えてもlのほうがよい。

なお朝鮮語にも /r/ と /l/の区別は存在しないのであるが、発音にあわせてrとlを書き分けるというばかげたことをやっている。ハングルでは書き分けないのに、ローマ字で書き分けるというばかげたことはやめるべきである。



上記の各点を是正すれば、ローマ字表記はさらに完璧であり、「鬼に金棒」ではないだろうか。