33997 返信 Re:通牒『軍慰安所従業婦等募集ニ関スル件』 URL 指環 2005/03/29 13:45
烏龍茶さん、レスありがとうございます。

> 吉見義明氏の「従軍慰安婦」を読むと、慰安所の開設業務そのものが「軍の通常の兵站業務の一つであった」という見方が、実態に合っているように思えます。

 全く、そのとおりです。吉見義明氏の岩波新書に書かれているように、旧軍人の回想などによると、1941年4月、福州を占領した第48師団の参謀部は、兵站部に軍慰安所の開設を指示していますし、漢口でも軍慰安所の確保が兵站業務の一つであったといいます。
 このことは、吉見義明氏の本だけではなく、秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』(新潮社)にも書かれていることです。
 秦郁彦氏の本から引用します。

「 ここで典型例として、中国大陸の占領地では規模が最大で、関係情報の多い漢口慰安所の実情を見ておこう。
 慰安所を監督・指導したのは第十一軍(漢口)の漢口兵站司令部だが、担当の慰安係長だった山田清吉中尉と軍医の長沢健一軍医中尉、それに兵站司令官だった堀江貞雄大佐がそれぞれ詳細な回顧録を残しているし(以下、略)」
『慰安婦と戦場の性』(新潮社)p90

 軍慰安所の開設や監督を兵站部が担当していたということは、軍慰安所が軍の後方・兵站組織であったことを示すものです。
 このことは、おっちゃんさんが言うような「民間の飲食店やパチンコ店に対して行政(保健所や警察)が行っていることとさほど違わない」(No.33930)、つまり、軍が民間の売春施設に行政的規制を行っていたに過ぎない、との見方を否定するものです。

> 兵站業務は「作戦に必要な物資の補給や整備」を言いますが、食料・燃料・弾薬・被服などは、軍がそれぞれ専門の「廠」をもっており、補給するものを自前で用意出来ました。
> しかし、慰安婦(私は「軍用性奴隷」と呼ぶのが正しいと思いますが)はあたり前ですが自前では調達できません。そこで「調達すべきもの」の特殊性から、その調達を民間に委託していた、ということではないでしょうか。

 そうですね。付け加えますと、中国・東南アジアでの慰安婦徴集は軍が自前で行っていました。また、朝鮮・台湾・日本内地での徴集には、内務省など他の国家機関が協力していたし、朝鮮総督府の協力があったことも間違いないでしょう。

> 軍が慰安所を開設する理由は、
> 1 性病蔓延の予防
> 2 兵士による民間人の強姦防止
> 3 兵士から民間娼婦への情報の漏洩の防止
> などがあったようですが、1は利用者を兵士に限定し、かつ健康管理を軍が行わなければ達成できません。2はすでにシベリア出兵の頃から問題になっていました。
> 南京占領軍の参謀長は、入城式直後に兵士の素行が問題になるとすぐに「女郎屋の開設」につき、下級参謀に依頼しています。
>
> 軍が管理し、軍用に用途が制限されていたのはそういうわけですし、食料や弾薬などと同様兵士にとって慰安所が必要なものであるという認識のもと、軍が率先して慰安所を開設していたわけですね。

 これも概ねそのとおりです。軍慰安所を作っても強姦防止には役立たなかったし、しだいに軍慰安所を作ることそのものが目的になってしまい、かえって性犯罪の被害を拡大していったわけですが。