紀末を控え、この100年間を振り返る試みが多くなされている。今世紀は、大戦や植民地支配を乗り越え、自由と平等を手にしたかに見えたが、最近では民族紛争の激化や、グローバルコモンズとしての地球環境の劣化の問題など新たに大きな課題が出現している。人類社会全体の持続可能性が危惧され、閉塞観も漂ってきた。さて、このような地球的規模の危機に対応するには、地球の歴史や現状を正しく把握することがまず必要である。持続可能な社会を構築するための第一歩は、地球で発生している現象を同定し、モニタリングして保存するとともに、生データを処理、分析して、意味を解釈し、結果を分かりやすく表示し、広報することであろう。このような情報は一般に、地球の特定の場所に関する情報であるため、地理空間情報と呼ばれている。例えば地球環境を把握するために、今日では多くの衛星が用いられており、その観測データは実に1日1テラバイトを超えている。実際、データの収集速度が、処理速度を上回ってきているのが現状である。

報化社会の本質は、サイバースペース(実空間と区別されたコンピュータのネットワークが生み出す仮想空間、デジタルワールド)が、リアルワールド(実際の世界、経済・生活・産業・環境)に先導的な役割を果たすことであろう。従って、実物世界のメタファーとして、いかに情報が欠落することなくサイバースペースを構築するかが重要な課題となってきた。それには従来のような「デスクトップメタファー」として、数字やテキストの処理をしてきた一般的なツールではなく、膨大な地理空間情報を取り扱い、多解像度で、3次元や時系列の地球を表現することが可能なツールが求められている。サイバースペースを、デジタル化された地理空間情報に基づいて構築することによって、実空間から仮想空間への正確な写像が可能になり、様々な自然現象や社会経済活動などを仮想空間上に可視化できる。このよう地理空間情報を高度に活用することによって、再構築されるサイバースペースのことをここでは、「デジタルアース」と呼んでいる。(米国のゴア副大統領は、すでに昨年1月末に、次世代の人の21世紀に向けての地球への理解を促進させるため、このようなツールを構築する「デジタル・アース構想」を提唱し、その取り組みを開始している。)

ジタル・アースによって、グローバルからローカルまでの多様な情報をシームレスに視覚化し、地球規模の問題の全体像を分かりやすく提示して、多くの人の共感に基づく「地球市民としての身体の知」の形成が促進されることが期待されている。デジタルアースのもつ、地球は一つ、人類は一つといった「連関・連携関係」を、体感させるといったメディアとしてのポテンシャルは大きい。さらにそれは国民経済からグローバルな経済への移行を促進し、国家ごとの経済の壁を突き崩し、グローバルコミュニティを形成していくことにもつながるものである。


 
 
<デジタル社会の到来>
  • 高解像度(1m解像度)の衛星画像の利用
  • 高速大容量ネットワークの普及
<高解像度、3次元での地球表現がDesktop上で望まれる>
  • 地上の状態/植物や動物の分布/気象/道路/行政区域/人口 etc.
  • 時間的変遷/過去のデータの有効利用
  • ネットワークを介してのパブリック・ドメインデータの利用
  • モデル化、シミュレーションを通しての現実世界の表現
<様々な用途>
  • 教育、研究、博物館
  • 意思決定、危機管理、環境問題
  • 土地利用計画、農業、都市計画
<課題>
  • 生データを意味あるデータに変換する方法の開発
  • ネットワークで結ばれた地理空間情報をブラウザー上で、様々な解像度で3次元の地球を表現する「ユーザインターフェイス」開発
  • 様々な情報源から提供される生データから必要な情報のみ抽出、表示するメカニズムの開発
  • 異なるフォーマットで作成されている各データを検索し、表示する技術の開発 (空間データ相互運用性/メタデータの標準化)
1998年1月ゴア米国副大統領の演説より (http://www.digitalearth.gov/)


The Digital Earth Gateway
The Digital Earth: Its Actors

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