2004年度秋学期 研究プロジェクトB(2) シラバス
Laboratory for New Methodology of Thinking and Learning
形態: B (テーマ別研究プロジェクト, 週1回2単位)
担当: 総合政策学部 井庭 崇 (いば たかし)
曜日時限:金曜5限
研究室情報> 最新情報はこちら
担当者情報> 教員プロフィール,
個人ページ
目的・内容
本研究プロジェクトの目的は、社会的なことについて考え、学ぶための新しい方法について研究・開発・実践することです。 今学期は、次のテーマを3本柱として考えています。
(1) モデリング&シミュレーション
(2) 体験学習
(3) 組織学習
これらのテーマは、一見すると互いに関係がないように見えますが、実は思考や学習という点で共通する側面をもっています。特に、「思考や学習は、単なる個人の内的変化ではなく、外界とのやりとりによる社会的な活動である」という考え方にもとづくと、これら3つのテーマは、どれも、「人と人の相互作用」もしくは「人とアーティファクトの相互作用」として捉えることができます。ここでいうアーティファクト(artifact)とは、直訳すると「人工物」のことですが、具体的には、道具や記号、言語、イメージなどがこれにあたります。このようなアーティファクトによって、私たちの思考や学習が支えられているのです。
そこで、本研究プロジェクトでは、「人と人の相互作用」や「人とアーティファクトの相互作用」という観点で、上記のテーマを捉えなおし、そのための方法と道具をつくることを目指します。
さて、3本柱について、もう少し詳しく紹介していくと・・・
(1) モデリング&シミュレーション
UML(統一モデリング言語)による社会やビジネスのモデリング、コンピュータ・シミュレーションによる政治・経済・社会・組織の分析、複雑系や進化のメカニズムの構成的理解など。モデリング・プロセスの開発や、シミュレーションを可視化(ビジュアライズ)するための道具づくりも含まれます。
モデルの記述(形式化)や操作(シミュレーション)を行うことで、思考実験を行ったり、モデル対象についての理解を深めるのに用いられます。
※ 担当教員(井庭)の研究チームが開発した、モデリングとシミュレーションのためのソフトウェア BESP (Boxed Economy Simulation Platform)やCB(Component Builder)を用いることができます。シミュレーション作成の方法については、ゼミ内では行いません。授業「企業と市場のシミュレーション」のSFC-GC映像アーカイブで、独学する必要があります。
(2) 体験学習子供のフィールド学習、大学における授業デザイン、ゲーミング・シミュレーションなど。
設定された場面やルールに基づいて、思考や学習が行われます。特に、形式化できない暗黙知の伝達などに用いられます。
(3) 組織学習シナリオ・プランニング手法や知識創造支援、コラボレーション支援など。個人を超えて、組織の環境適応や革新を行うために、単なる情報共有ではなく知識創造が目指されます。形式知と暗黙知をうまく変換していくための方法や道具づくりを行います。
ゼミの共通目標は、思考や学習に関する考え方と理論を理解し、分野を超えていろいろな「方法」を吸収・整理していくことです。そして、最終的には、状況に応じて「方法」を適用するための「方法論」を構築していきたいと思います。個人やグループでの研究では、方法自体の開発や、方法を支援する道具づくり、方法を用いた実践などを行っていきます。
※ 個人・グループ研究では、上記の3本柱のうち、どれかひとつを選択して、具体的な研究を進めることになります。
授業形式・形態
研究プロジェクトは、知らないことを理解する「勉強」の場ではなく、付加価値のあるアウトプットを出すための「研究」の場です。研究プロジェクトは、いわゆる「授業」とは異なるという点を意識し、受け身の姿勢ではなく自らが創りあげていく気持ちで臨んでください。
- 指定文献の読解と発表
自分の担当になった本を読んで理解し、その本質について、ゼミのメンバーに発表してもらいます。また、それ以外にも各自たくさんの本を読んでもらうことになります。おすすめの文献は、以下の参考文献の欄に挙げておきます。
- 個人・グループによるプロジェクト研究
各自の問題意識に基づき、具体的な研究・実践を行ってもらいます。そのため、プロジェクトを立ち上げ、ゼミの正規の時間外に、積極的に自分たちで研究を進める必要があります。
研究成果は、学期途中と学期末に「プロジェクト・マガジン」にまとめます。これは、研究やプロジェクトに関する記事を載せた雑誌で、自分たちでDTP(デスクトップパブリッシング)によって作成するものです。
個人・グループによるプロジェクト研究の成果は、学期末に論文とプレゼンテーションとしてまとめます。論文やプレゼンテーションは、学会のスタイルで行います。
よい成果がでた場合には、一緒に学会発表をしましょう。また研究成果は、Webや冊子などのかたちで公開します。
授業スケジュール
![]()
評価方法
輪読や議論での活躍度、個人・グループ研究の論文とプレゼンテーション、および研究プロジェクト関連の諸活動によって総合的に評価します。
履修条件
- 自分の分野に固執せずに、他分野の方法や概念を貪欲に学んでいける人
- ゼミの時間外に、自分で個人・グループ研究を進めていける人
受け入れ予定人数
20名程度
エントリーと選抜の方法
※ 履修希望を出す前の段階にも、メールで相談を受け付けます(iba@sfc.keio.ac.jp 宛)。あとで「履修してみたら、自分の興味関心・研究内容に適さなかった」ということがないように、事前にメールでやりとりすることをおすすめします。
■ 第一段階履修を希望する人は、7月23日(金)までに、以下の情報を書いて、メールでエントリーしてください。宛先は iba@sfc.keio.ac.jp で、サブジェクト(件名)を「研究プロジェクトB2 履修希望」としてください。
(1) 氏名,ログイン名,学籍番号
(2) 簡単な自己紹介(やってきたこと・興味のあること・今後の方向性など)
(3) 秋学期に行う研究の具体的な内容と方法(A4用紙1〜2枚程度: docまたはpdf形式で添付)
(4) これまで所属した研究プロジェクト
(5) 来学期、並行して所属する予定の研究プロジェクト
(6) これまでに履修した担当教員(井庭)の授業
■ 第二段階
7月26日(月)〜7月30日(金)あたりに面接を行います。詳細は、メールでお知らせします。
※ 見に来るだけの聴講は認めません。なんらかの事情により正規履修できない場合(大学院生等)の聴講者も、同じタスクをこなしてもらうこととし、正規履修者と同様のプロセスで選抜します。「聴講」である旨と、その理由を明記の上、第一段階のエントリーを行ってください。
連絡先(履修希望・質問等)
『状況に埋め込まれた学習:正統的周辺参加』(ジーン・レイヴ, エティエンヌ・ウェンガー, 産業図書, 1993)
『「わかる」とはどういうことか:認識の脳科学』(山鳥重, ちくま新書, 2002)
『メンタルモデル:言語・推論・意識の認知科学』(P.N.ジョンソン=レアード, 産業図書, 1988)
『レトリックと人生』(G・レイコフ, M・ジョンソン, 大修館書店, 1986)
『比喩と理解』(山梨正明, 認知科学選書17, 東京大学出版会, 1988)
『メタファー思考:意味と認識のしくみ』(瀬戸賢一, 講談社, 1995)
『アナロジーの力:認知科学の新しい探求』(キース・J・ホリオーク, ポール・サガード, 新曜社, 1998)
『思考と言語』(L.S. ヴィゴツキー, 明治図書, 1962)
『認知的道具のデザイン』(加藤浩, 有元典文, 金子書房, 2001)
『人を賢くする道具: ソフト・テクノロジーの心理学』(D.A.ノーマン, 新曜社, 1996)
『コンピュータと教育』(佐伯 胖, 岩波新書 黄版332, 岩波書店, 1986 )
『新・コンピュータと教育』(佐伯 胖, 岩波新書 新赤版508, 岩波書店, 1997 )
『マインドストーム:子供, コンピューター, そして強力なアイデア』(シーモア・パパート, 未來社, 1995)
『時を越えた建築への道』(クリストファー・アレグザンダー, 鹿島出版会, 1993)
『シュンペーターの経済観』(塩野谷祐一, 岩波書店, 1998)
『コンピュータと認知を理解する』(テリー・ウィノグラード, フェルナンド・フローレンス, 産業図書, 1989)
『情報編集力:ネット社会を生き抜くチカラ』(藤原和博, 筑摩書房, 2000)
『シナリオに基づく設計』(ジョン・M. キャロル, 共立出版, 2003)
『ペーパープロトタイピング』(Carolyn Snyder, オーム社, 2004)
『デザインの思考過程』(ピーター・G・ロウ, 鹿島出版会, 1990)
『デザイン言語:感覚と論理を結ぶ思考法』(奥出直人, 後藤武 (編), 慶應義塾大学出版会, 2002)
『XPエクストリーム・プログラミング入門:ソフトウェア開発の究極の手法』(K・ベック, ピアソン・エデュケーション, 2000)
『知識創造の方法論:ナレッジワーカーの作法』(野中郁次郎, 紺野 登, 東洋経済新報社, 2003)
『最強組織の法則:新時代のチームワークとは何か』(ピーター・M・センゲ, 徳間書店, 1995)
『フィールドブック 学習する組織「5つの能力」』(ピーター・センゲ ほか著, 日本経済新聞社, 2003)
『フィールドブック 学習する組織「10の変革課題」』(ピーター・センゲ ほか著, 日本経済新聞社, 2004)
『シナリオ・プランニング: 戦略的思考と意思決定』(キース・ヴァン・デル・ハイデン, ダイヤモンド社, 1998)
『企業生命力』(アリー・デ・グース, 日経BP社, 2003)
『一般システム思考入門』(ジェラルド・M・ワインバーグ, 紀伊国屋書店, 1979)
『システム仕様の分析学:ソフトシステム方法論』(Brian Wilson, 共立出版, 1996)
『ソフト・システムズ方法論』(ピーター・チェックランド, ジム・スクールズ, 有斐閣,1994)
『新版 科学論の展開』(A.F.チャルマーズ, 恒星社厚生閣, 1985)
『理論構築の方法』(J・ヘイグ, 白桃書房, 1978)
『複雑系入門:知のフロンティアへの冒険』(井庭崇, 福原義久, NTT出版, 1998)
『社会シミュレーションの技法:政治・経済・社会をめぐる思考技術のフロンティア』(ナイジェル・ギルバート, クラウス・G・トロイチュ, 日本評論社, 2003)
『創造の方法学』(高根 正昭, 講談社現代新書 553, 1979)
『社会科学のリサーチ・デザイン;定性的研究における科学的推論』(G.キング, R.O.コヘイン, S.ヴァーバ, 勁草書房, 2004)
『創造的論文の書き方』(伊丹敬之, 有斐閣, 2001)
『ひと月百冊読み、三百枚書く私の方法』(福田和也, PHP研究所, 2001)
『「超」文章法』(野口悠紀雄, 中公新書, 2002)
『考える技術・書く技術:問題解決力を伸ばすピラミッド原則』(バーバラ・ミント, 新版, ダイヤモンド社, 1999)
『教材開発マニュアル:独学を支援するために』(鈴木克明, 北大路書房, 2002)
履修を考えている人へのひとこと
- 本研究プロジェクトは、2004年度が1年目です。みなさんと一緒に試行錯誤しながら、ゼミ運営を行っていきたいと思います。
- 今回、春学期に行った井庭研1・2の内容を再編成しました。井庭研1は「捉え方」(視点・枠組み)、井庭研2は「方法」(方法論と道具づくり)についての研究プロジェクトと捉えてください。
- 担当教員(井庭)からの知識伝達の多くは、授業で行う方針です。秋学期に担当する「モデリング・シミュレーション入門」と「探索的モデリング」のうち、特に「モデリング・シミュレーション入門」では、システム論、モデリング、シミュレーションについて導入的な講義を行うので、履修もしくは聴講するようにしてください。
その他・留意事項
本研究プロジェクトの担当者は有期教員であり、残り年数は3年〜5年です。