井庭崇 担当科目 (2004年度)
「コラボレーション技法」
大学:慶應義塾大学SFC
分類:学部対象 / 汎用-共通基盤-ナレッジスキル科目(学部)
担当:井庭 崇 (iba@sfc.keio.ac.jp)
開講:春学期
時限:火曜2限
教室:ε22(予定)
単位:2単位
授業形態:講義, 演習/実習, グループワーク
ゲストスピーカー:2回程度を予定
【主題と目標/授業の手法など】
グループワークを経験した人の中には、それが非常にエキサイティングな活動であると感じ、何度も参加する人たちがいます。その一方で、「何が面白いのかわからない」とか「一人でやった方がいい」と感じている人も少なからずいます。このような二つの経験を分けているのは、一体何なのでしょうか? そのひとつとして考えられるのが、そのグループワークにおいて有効な「コラボレーション」が行われたかどうか、という違いです。コラボレーションとは、複数の人々が、ひとりでは決して到達できないような付加価値を生み出す協同作業のことです。有効なコラボレーションが行われているグループでは、単なるコミュニケーションや分担ではなく、発見や創造の「勢い」がメンバーの間で共鳴し、増幅していきます。その結果、飛躍的なアイデアやイノベーションを生み出すことができ、メンバーの満足感も高まることになります。本講義では、このようなコラボレーションを行うためのヒントを取り上げていきます。そして、演習やグループワークを通じて、その姿勢やノウハウを体験的に理解することを目指します。
【提出課題・試験・成績評価の方法など】
提出課題は、次のようになります。
- グループ課題=中間報告, 最終発表会でのプレゼンテーション
- 個人課題=宿題, 最終レポート「グループワークを終えて:私のコラボレーション技法」
成績評価は、個人課題とグループ課題をもとに総合的に評価します。なお、中間・期末試験は行いません。
【履修上の注意】
授業時間外に行うグループワークに積極的に参加することが求められます。また、授業で取り上げた話題に関する宿題を出すので、休まずに参加する必要があります。
授業で提示されるのは、あくまでコラボレーションに関するヒントです。そこで得られた知識とグループワークの経験から、自分なりのコラボレーション技法を編み出してください。
【履修者数制限】
履修人数を制限する。
受入学生数(予定):約 200 人
選抜方法と時期:予想履修人数が多くなりそうな場合には、第1回目の授業(4/13)で登録を行います。その日のうちに抽選を行い、その結果は翌々日に発表します。
【教材・参考文献】
教科書は特にありません。以下は、本講義で取り上げる重要参考文献です。
マイケル・シュレーグ, マインド・ネットワーク:独創力から協創力の時代へ, プレジデント社, 1992 (ISBN: 4833414368)
加藤芳夫+サントリーデザイン部, なっちゃんの秘密:商品デザインは人間を見つめることから始まる。, 六耀社, 2001 (ISBN: 4897374057)
トム・ケリー, ジョナサン・リットマン, 発想する会社!: 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法, 早川書房, 2002 (ISBN: 415208426X)
ジャック・フォスター, アイデアのヒント, TBSブリタニカ, 1999 (ISBN: 4484031019)
野中郁次郎, 竹内弘高, 知識創造企業, 東洋経済新報社, 1996 (ISBN: 4492520813)
川喜田 二郎, 発想法: 創造性開発のために, 中央公論社, 1967 (ISBN: 4121001362)
中谷 彰宏, 小室 哲哉, プロデューサーは次を作る: ビジネス成功22の方程式, 飛鳥新社, 1998 (ISBN: 4870313464)
クリストファー・アレグザンダー, 時を超えた建設の道, 鹿島出版会, 1993 (ISBN: 4306043061)
川崎 和哉, オープンソースワールド, 翔泳社, 1999 (ISBN: 4881358359)
池田和明, 今枝昌宏, 実践 シナリオ・プランニング: 不確実性を利用する戦略, 東洋経済新報社, 2002 (ISBN: 4492531440)
【授業計画】
第1回(4/13) イントロダクション
授業の全体像と目標を共有します。また、映画のメイキングビデオ等を見ながら、モノや考え方が生まれるプロセスやコラボレーションについてのイメージを拡げたいと思います。
第2回(4/20 火) 創造的思考@:発散思考とブレインストーミング
創造的思考における発散思考と収束思考の思考モードについて取り上げます。個々人が創造的思考を行うための「自由連想法」、「強制連想法」、「類比発想法」等を体験します。また、グループによる発散思考の技法である「ブレインストーミング」の意義と方法を理解し、実際にブレインストーミングによるアイデア出しの演習を行います。
第3回(4/27 火) 創造的思考A:収束思考とKJ法
創造的思考における収束思考の方法として、KJ法を取り上げます。演習では、前回ブレインストーミングで出したアイデアをまとめていきます。概念間の関係性を、空間的な配置で可視化することの重要性について体験します。
※1週間休み
第4回(5/11 火) メンタルモデルと暗黙知・形式知
物事を捉えるときに影響するメンタルモデルについて取り上げます。「わかる」とはどういうことか、理解し合えないことがあるのはなぜか、ということについて考えます。また、暗黙知から形式知へ、また形式知から暗黙知へ変換することの重要性について考えます。
第5回(5/18 火) ゲストスピーカーによる講演@
ゲストスピーカーを招き、授業に関連したテーマの講演を行います。
第6回(5/25 火) 共感を引き出す工夫:ヒット曲の歌詞を事例に
多くの人の「共感」を引き出す工夫について取り上げます。そのことを考えるためのひとつの事例として、J-POPヒット曲の歌詞に注目し、分析してみたいと思います。そこには、「具体的過ぎず、しかし抽象的過ぎない」という絶妙なバランスを見いだすことができます。
第7回(6/1 火) ルールとパターン
コラボレーションを円滑に行うための「ルール」と「パターン」について取り上げます。適切なルールは、参加メンバーを拘束するのではなく、むしろ自律性と自由度をもたせるために設定されます。パターンは、ノウハウの蓄積や共有のために用いられます。このパターンの考え方は、もともと建築デザインのために考案され、その後ソフトウェア・デザインに取り入れられたものですが、他の分野への応用可能性についても考えてみたいと思います。
第8回(6/8 火) ゲストスピーカーによる講演A
ゲストスピーカーを招き、授業に関連したテーマの講演を行います。
第9回(6/15 火) オープン・コラボレーション
オープンソース・ソフトウェアの開発について取り上げます。オペレーティング・システムLinuxは、最初一人の学生が趣味で作成したものですが、その後インターネット上で次々に参加者が加わり、現在では数千人のプログラマが数百万行のコードをそれぞれに改良していると言われるまでに成長しました。このようなオープンソース・ソフトウェアの開発では、多くの場合、金銭的な報酬があるわけではありません。それではなぜ人びとは参加しようと思うのでしょうか?出入りが自由なオープン・コラボレーションが成功する仕組みについて考察します。
第10回(6/22 火) シナリオ・プランニング:未来イメージの共有と戦略形成
不確実性に対処する組織学習の手法として、シナリオ・プランニングを取り上げます。シナリオ・プランニングは、未来がどうなるのか、そしてその未来がなぜ起こるのかを突きつめて考え、ストーリー化するものです。構造的不確実性を議論の俎上に載せ、自分たちの環境にどのような種類の「事態が待ち受けているか」を認識するのに役立ちます。また、さまざまな見解を持つ組織メンバーの対話が促進し、メンタル・モデルをすり合わせることができます。さらに、現実になりうる複数のシナリオのすべてに耐えうる意思決定が行えるようになると言われています。
第11回(6/26 土) グループワーク最終発表会@
グループワークの成果報告プレゼンテーションを行います。コメンテーターとして、学外の方やOB・OGの方に参加してもらう予定です。
第12回(6/26 土) グループワーク最終発表会A
グループワークの成果報告プレゼンテーションを行います。コメンテーターとして、学外の方やOB・OGの方に参加してもらう予定です。
第13回(6/29 火) 総括
これまでの授業を振り返り、コラボレーションについて再考します。
【授業に関する補足情報】
この授業は、今年度からの新規科目です。
大学での今後の活動を有意義にするために、早い時期に履修することをおすすめします。
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