『フューチャリスト宣言』(梅田望夫, 茂木健一郎)

2007.06.01 Friday 22:55
井庭 崇


『フューチャリスト宣言』(梅田望夫, 茂木健一郎, ちくま新書, 2007)image[]を読んだ。

image[FuturistBook]
この本は、シリコンバレー在住で『ウェブ進化論』の本で有名な梅田望夫さんと、脳と「クオリア」の観点からマルチに活躍する研究者 茂木健一郎さんの対談を収録した本だ。対談のなかでも言及されているように、とにかく未来に対して明るく行こうという、戦略的オプティミズムとでもいうべき、前向きな二人の対談である。このなかで、研究者や企業家の生き方として、印象に残ったところ、考えさせられたところがいくつかあった。

 まず、グーグルについて。梅田さんは、「『ネットって何なのか』ということを、グーグルが発見した」(p.19)と評価する。グーグルは、ご存知のようにウェブページ間の関係性から順位づけを行うPageRank(ページ・ランク)というアルゴリズムで検索結果を表示する点で革新的だった。WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)という巨大なネットワーク(グラフ)構造を、数学的な観点から捉え直し、まったく新しいWWWの世界をみせてくれた。
 だからこそ、「グーグルが出てこなかったら、おそらくいまもなんとなく『ネットって何なんだろうね』という模索状態が続いていたのだろうと思います。彼らが、インターネットとは何ぞや、というのを発見したんだと思います。」(梅田: p.20)と言うのである。
 確かにね、と思う。僕は以前から「検索して一覧表示するというだけではネットワークを巨大なブラックボックスのデータベース化するだけで、物足りない! もっとネットワーク性を活かした面白いことができるはず。」と言ってきたが、それでもやはりグーグルがやったことはかなり革新的だとも思う。単なるページ内の情報ではなく、ネットワークの構造自体に付加価値の源泉を見出したからだ。ここでの梅田さんの指摘のような、グーグルのすごさを一言で言い切った文章に出会ったことがなかったので、この部分は、なかなか印象的だった。

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