『フューチャリスト宣言』(梅田望夫, 茂木健一郎)
2007.06.01 Friday 22:55
井庭 崇
そんななか、今回の梅田さんの指摘・解説で、茂木さんの目指すところが少し理解できた気がした。茂木さんは「いま自分が目指すべきは、アインシュタインではなくてダーウィンなのだ」という発見から、方針転換をしたというのだ。つまり、脳科学において、意識や心の問題をアインシュタインのように理論的にきれいな形で定式化するというのではなく、ダーウィンがビーグル号でやったようにいろいろな現場を見てまわり、「突然変異」と「自然選択」のような、大雑把でもいいからリアリティをうまく捉える概念を提案する、ということだ。そういう方針転換をして、いままさにそれを実践しているのだという。
実は僕は10年くらい前に、複雑系の関係で茂木さんと飲んだことがあったのだけど、そのときも、クオリアの問題を考えているとなかなかサイエンスにならない、と困っていた記憶がある。そのころは、学術論文ではオーソドックスな脳科学の研究をやって、本ではサイエンスから離れて自由に好きなことを書くという、二重生活を送っていたようだ。その後、特に最近は、そのようなことを考えて、ふつうの脳科学ではないアプローチで、脳と創造性の問題に取り組んでいるんだな、ということがわかり、なんだか少しすっきりした。
それにしても、茂木さんは多忙で人並みならぬ生活を送っているようだが、梅田さんもネットに重きを置いた相当めずらしい生活を送っているようだ(詳しくは本の方で読んでほしい)。ストイックな感じ。
梅田さんも茂木さんも、僕が好きな方向性の先にいる感じの人たちだ。いろいろな分野に興味があって、全体的に考えながら、世界の捉え方を提供したいと思っている人たち。梅田さん自身、「好きなことを一つずっと深堀りするというよりも、世の中を俯瞰して理解したいという気持ちがある」(梅田, p.110)とか、「異質なものと異質なものを結びつけるとか、歴史との比較で未来を考えるとか」(梅田, p.111)、そういうことが好きだと語っている。茂木さんも、旧来の枠組みに当てはまらないような進み方で、いろいろなことを考え、言及していく。
[7] << [9] >>
-
-
<< MPS大阪学会旅行
学校のデザインに関するパターン・ランゲージ >>
[0] [top]