英語の原著で読む意味:コトバの多義性を味わう

2010.10.16 Saturday 11:45
井庭 崇


僕の授業や研究会では、教科書や輪読文献を原著版(英語)で読むようにしている。日本語訳が出ている本も、あえて英語で読む。これにはいくつかの理由がある。

まず、日頃から英語に触れるという「外国語の普段使い」を実践するためである。そして、それらの活動を重ねれば(複数に参加すれば)、自然と「言語のシャワー」を浴びる環境が少し実現できるようになる(リーディングに関しては)。これは、英語で読むことのプラクティカルな理由。

原著で読むことには、もうひとつ別の本質的な理由がある。それは、翻訳では失われてしまうコトバの「多義性」を味わいながら読むということだ。

例えば、「パターンランゲージ」の授業の教科書に指定している『The Timeless Way of Building』でいえば、英語の "way" というコトバは、「道」という意味があるが、同時に「方法」という意味ももつ。英語で "way"というときには、この両方のニュアンスを多義的にもたせることが可能であるが、これを日本語に翻訳するときには、「道」か「方法」のどちらかを選択せざるを得ない。このことは、あてるコトバの問題だけでなく、意味の特定にもなるので、内容の理解に大きな影響を及ぼすだろう。

こうして、"timeless way"というタイトルも、「時を超えた道」か「時を超えた方法」のどちらかを選ばなければならなくなる。本来は両方の意味をもっているにもかかわらず。(この本の場合は、老子の「道経」(タオイズム)の「道」(タオ)にもかかっているので、その意味では「道」は適切だといえる。)

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