英語の原著で読む意味:コトバの多義性を味わう

2010.10.16 Saturday 11:45
井庭 崇



他の例をあげると、英語の”life”は、日本語の「生命」「生活」「人生」という意味を併せ持っている。日本語の「生」がこの共通性を同じく表しているが、だからといって、"life"の訳語として「生」だけで済ますわけにはいかない。文脈に合わせて、訳者が「生命」か「生活」か「人生」という意味を選択しなければならなくなる。同様に、"living"も、「生きている」「生き生きしている」であり、「生活」「居住」でもある。

英語でよく使われる "nature" も、「自然」という意味と「本質」という意味の両方の意味を持つ。"The Nature of Order"は、秩序の「本質」であり「自然」でもある。

言語によって、コトバの多義性の中身と幅が異なる。これが、翻訳の最大の難しさといえるだろう。もちろん、多義的なコトバも、文脈から明らかに意味が特定される場合も多い。そういう場合には、翻訳の問題は生じないが、多義性の幅をむしろ積極的に活用して表現している著者・著作に関しては、原著でなければ味わえない「うまみ」があることになる。

このような理由で、英語で読む、原著で読む、ということを推奨/実践している。実際には、英語で読むだけでいっぱいいっぱいかもしれないが、ぜひ、そういうコトバがもつ「広がり」も感じながら読みたいものである。

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