『ウェブ仮想社会「セカンドライフ」』(浅枝大志)

2007.07.26 Thursday 10:32
井庭 崇



 もちろん、セカンドライフ以前にも、このような3Dヴァーチャル世界というのはいろいろあった。しかし、そのようなサービスでは、アバターの操作の自由度はあっても、環境を構築する(建物やモノをつくる)自由度がここまで高いものはなかったように思う。つまり、これまではサービスの提供側が環境を用意し、ユーザーはそれを利用するだけ、というものだったのだ。これに対し、セカンドライフでは、建物やモノはすべてユーザーによってつくられたものだ。その意味で、セカンドライフは、3Dヴァーチャル世界とWeb2.0が融合した最初の好例なのだと思う。

 著者も、セカンドライフは「2Dインターネットの限界に対して突破口を与えてくれた」(p.53)と指摘している。このような3Dへの変化は、セカンドライフという1サービスにとどまるものではない。「インターネットが、これまでのページ表現から3D表現へと置き換えられていく流れは、ますます加速していきます。この流れと並行して、いまのWeb2.0的なサービスも3D表現化されていきます。」(p.46)と予想する。さらにこの本では、新しいデジタルデバイドの問題についての新しい視点も述べられている。「『デジタルデバイド』とは、パソコンやインターネットが使える人と使えない人の間でアクセスできる情報に段違いの格差があることを示した用語です。10年後には前述のような感性の隔たりによって、インターネット利用者の間にもデジタルデバイドが発生しえます。いうまでもなく、2Dウェブが限界の人と、3Dウェブを活用できる人との情報格差です」(p.155)。

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