『芸術と政治をめぐる対話』(エンデ × ボイス)がかなり刺激的だった

2011.01.24 Monday 23:50
井庭 崇


image[Ende16Book150.jpg]image[] 『芸術と政治をめぐる対話(エンデ全集16)』image[](岩波書店, 1996)を読んだ。ドイツのファンタジー作家であるミヒャエル・エンデと、同じくドイツの現代美術家・社会活動家であるヨーゼフ・ボイスが行なった1985年の対談である。二人ともすでに亡くなっていることもあり、かなり貴重な記録だといえる。これが(ドイツ語ではなく)日本語で読めるというのは、実にうれしいことだ。

二人の話は最初から最後までほとんどすれ違ったまま進むのであるが、それゆえ、それぞれの考えが何度も違うかたちで語られていて興味深い。

ボイスは、社会という芸術作品をみんなでつくりあげる「社会芸術」というものを提唱する。芸術はこれからかたちを変えて「社会」をも作品とする段階にくる。そして、それは誰か一部の人間によってつくられるのではなく、全員がそれに関わり、いわば「社会芸術家」になる(ならなければならない)。そう語る。

これに対してエンデは、芸術というものをもっと狭く???といっても、僕たちが知っている常識的な範囲で???捉える立場をとる。芸術は美の領域での創造である。そして、未来へのひとつのお手本やスケッチとなるようなものを具体的なレベルで描くこと、そして、それによって何かを伝えるのではなく経験してもらうことこそが芸術にとって大切なのだ、と語る。

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