『芸術と政治をめぐる対話』(エンデ × ボイス)がかなり刺激的だった

2011.01.24 Monday 23:50
井庭 崇


科学哲学史を紐解けばわかるように、近代科学では真・善・美という概念は科学の世界から追放されてしまっている。それは、デカルトの要素還元的な分析アプローチの影響である。全体は部分に分けて考えられるべきであり、全体性というのは探究の対象とはならないのだ。それでは、全体性とは何なんだろうか。

「全体性とはなにか、それも定義できません。定義できれば、全体性でなくなってしまうわけですから。全体性というのは、特定できないものです。」(エンデ:p.23)

このエンデの言葉からもわかるように、全体性ということを考え始めると、途端に神秘主義的になってしまう。あるいは、宗教的な世界観に入ってしまう。僕が興味があるのは、宗教にもオカルトにもいかずに、この全体性の問題にアプローチすることはできないか、ということである。オートポイエーシスのシステム理論等によって、あるいはパターン・ランゲージ等の方法によってアプローチすることはできないか。

僕にとって、ニクラス・ルーマンは、全体性に対して動的な自己生成プロセスの観点からアプローチした理論家であり、クリストファー・アレグザンダーは、真・善・美を備えた全体性をつくるための方法について探究した方法論者であった。これらを新しいかたちで結合・融合・進化させることが僕のやりたいことになる。

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