『芸術と政治をめぐる対話』(エンデ × ボイス)がかなり刺激的だった

2011.01.24 Monday 23:50
井庭 崇




以上、エンデの言葉を中心に紹介してきたが、エンデだけに共感したわけではない。ボイスの言葉にも、ぐっとくる言葉は多々あった。芸術の価値と使命という文脈で、ボイスは次のように語っている。

「理解できるものなんて、うんざりするほどあるよ。もちろんそれも大切だけどさ。だが芸術にとっては、理解できないほうが、ずっといい。人びとのなかに力を、想像とか直観にたいする力を呼びさまし、さらに、それ以上のことをするわけだから。それが僕の方法なんだ。」(ボイス:p.150)

これまで教育や文章で、とにかく徹底した「わかりやすさ」を追究してきた僕は、最近「わからない」という状況をつくることの大切さについて考えている。ここでボイスが語っていることは、先日池上高志さんが「メディアがつくる違和感」というフォーラムで、「ある種のクレイジーネスが必要だ」とか「わからなさ・違和感を生む」と言ったことと重なる。

そして、世界を変えるということについて。エンデは、新しい芸術作品が存在するだけで世界はすでに変わっているんだという立場をとるのに対し、ボイスの方はもっと過激だ。司会者が話を現実に引き寄せようとしたところ……

「いや、ともかく突撃しておくことが、とても重要なことなんだよ。でないといつだって、敷居のむこう側を見ることは不可能ということになる。『こいつはまずい、こいつはまずい』って、みんな嘆く。だが僕は、嘆こうなんて思わない。可能性はひとつしかない。で、それはいまの現実にたいするポジティブな提案にほかならない。」(ボイス:p.17)


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