学会発表「書籍販売市場における上位タイトルの売上分析」
2007.05.30 Wednesday 15:05
井庭 崇
5月17日に行われた情報処理学会MPS(数理モデル化と問題解決)研究会で発表した研究の2つめは、「書籍販売市場における上位タイトルの売上分析」というものだ。
これは、日本における書籍販売市場の実データを解析した研究だ。書籍販売市場は、売れているものは爆発的に売れているが、たいていのものはほとんど売れていないというのが現状だ。クリス・アンダーソンのロングテール論などでもこのような話は有名だが、それが実際にどのような分布になっているのかを実データで示した研究は国内外でもほとんどない。
そのような分布を明らかにするために、僕らは日本全国の書店のPOSデータを用いて実証的に示したというわけだ。結果からいうと、販売冊数と順位の分布はほぼ「べき乗分布」に従っていた。このことは年間でみても、月間でみても当てはまる。
分布がいつも一緒ということは、非常に興味深いこと。書籍販売市場では、毎年約7万7千点の新刊が出ており、書籍の顔ぶれは日々変わっている。しかも、ふつう同じ本を2冊以上買う人はいないので、買っている人の顔ぶれもどんどん入れ替わっている。しかし、それにもかかわらず、販売冊数と順位の分布はいつも同じ形をしているということは、実に不思議なことなのである。
まとめると、個々の書籍、個々の購入者というレベルは絶えず入れ替わっているのに、販売冊数-順位分布という市場レベルでは、ある法則性が維持されている。これは、まさにこの法則性が、市場レベルの「創発」特性だということを示している。
この研究では、その販売冊数-順位分布の特徴について解析したのだ。詳しくは論文を参照していただくとして、今回わかったことは、次の2点。
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