『プロフェッショナル 仕事の流儀 13』―――(1) 大きなスケールの研究

2007.08.23 Thursday 10:46
井庭 崇



 そんな悩みに僕もいつも直面している。3年ほど前にSFCに着任したとき、僕に課されたのは「スケール感を出す」ということ。小さくまとまるな、ということだ。それまで「新しい思考の道具をつくる」というテーマで、複雑系とシミュレーションの分野の研究をしてきたが、そういう個別分野でのイノベーションではなく、もっと世界にインパクトをもたらすような研究をしろ、ということなのだ。そんなこともあって、ここ数年は社会学や社会哲学などの新しい領域にもどんどん踏み込んでいき、新しい視点と感覚を磨いてきた。学問分野の組み合わせでいうと、普通じゃない動きをしていると思う。それでも、個々の研究の話になると、着実に成果を出そうとして、どうしても小さくまとめがちだと思う。だめだなぁと思いながらも、なかなかそういうサイクルから抜け出せていない。

「現在あるインターネットを使ってちょっと工夫すれば、様々な価値を生み出すことが可能です。それはそれで素晴らしいことですよ。でも、今までになかった新しいものをつくり出すということは、それとは別物です。」(石井, p.141)

 そう、別物なのだ。そして、クリエイター志向だった僕が研究者になろうと思ったのは、まさにその別物の「今までになかった新しいものをつくり出す」ためだった。その意味で、今回の石井さんの話はとても魅力的で、僕の大きな一歩に向かって背中を押してくれるものだった。


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