パターン・ランゲージは、現状を肯定しながら少しずつ成長することを支援する

2012.12.06 Thursday 23:44
井庭 崇



 パターン・ランゲージは「ことば」であり、対象そのものではない。つまり、その「ことば」で記述したい対象=「いきいきとした全体」そのものではない。このことをごちゃまぜにして考えてしまうと、ことばで記述されたものをすべて組み合わせると「全体」をつくれると考えがちだが、それは間違いだ。

 クリストファー・アレグザンダーは、いきいきとした全体を言葉で説明することはできないから、それを「名づけ得ぬ質」(Quality Without A Name: QWAN)ととりあえず呼ぶことにした。パターンは「名づけ得ぬ質」そのものの「部分」ではない。パターンは、その質を指し示す記号に過ぎない。だから、パターン・ランゲージのパターンをいくら集めても、「いきいきとした全体」そのものにはならないのだ。パターンは、あくまでも「いきいきとした全体」にはどのような側面があるのか、という読み解き方/光の当て方にすぎない。パターン・ランゲージの意義は、「いきいきとした全体」を捉えるための手段がこれまでなく、それゆえコミュニケーションの俎上に載せることができなかった限界を克服し、それを可能にしたことだ。

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