アマルティア・センのケイパビリティ・アプローチとパターン・ランゲージ

2014.05.04 Sunday 15:45
井庭 崇


アマルティア・センとの再会

アマルティア・センの著作は、15年ほど前に初めて読んでからというもの(当時の僕は新しい経済学の潮流と方法論についての研究をしていた)、研究のなかで様々なかたちでセンに再会し、3年おきぐらいに再読している。今回のきっかけは、ヒラリー・パトナムの文献を読んでいるときであった。

最近、パターン・ランゲージ3.0をプラグマティズムの考え方と結びつけて考えたいと思い、その手の文献を読み漁っている。そして、ヒラリー・パトナムの『事実/価値二分法の崩壊』を読んでいるときに、再びセンに出会った。

この本では、現在の私たちの思考・思想の奥に根付いている事実と価値の二分法、つまり「事実の認識は客観的であるが、価値判断は主観的なものである」という考え方に異議を唱えている。パトナムいわく「事実の知識は価値の知識を前提する」というわけである。

その著作の冒頭からアマルティア・センが登場する。パトナムは、センのケイパビリティ(潜在能力)アプローチについて、「そのアプローチの核心にあるのは、開発経済学の問題と倫理学理論の問題を別々にしておくことは断じてできないのだ、という認識である」とし、2つの章でセンを取り上げている。

アレグザンダーの思想を、そしてパターン・ランゲージ3.0を、プラグマティズムと結びつけて考える理由はいくつかあるが、事実と価値の問題を別のものとして区別するのではなく、相互に浸透関係にあるものと看做すということが、パターン・ランゲージが目指すところを理解する上で重要だからである。

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