パースのアブダクションとパターン・ランゲージ

2014.05.04 Sunday 15:53
井庭 崇



僕はパターン・ランゲージを知識記述・共有の方法としてではなく、語り・対話のメディアとして用いている。これは、パターン・ランゲージの分野のなかでは珍しい使い方で、僕が2010年から始めた独自の使い方である(最近、国際学会等でも面白がられ始めている)。

例えば、ラーニング・パターンを用いた対話のワークショップでは、準備として40パターンをざっと読んで、自分に経験があるかをチェックするということを行う。つまり、不可分な全体としての「経験」をパターンによって読み解くという作業をする。まず、ここがアブダクションに関係する。

そこでは、学びに関して、自分の経験のなかでよい結果を生み出した原因が、ある特定のパターンと同様のことを行ったからではないかと推論する。この推論は間違っているかもしれないが、パターン記述との一致からもっともらしい仮説であると判断される。これが、パターンによるアブダクションである。

これは自分の経験に対してだけでなく、他者の行いに対する推論としても行われる。あるTEDトークをみて、その伝え方の巧みさをプレゼンテーション・パターンで読み解くとしよう。その結果を生み出しているのが、どのパターンたちなのかを考えるとき、そこにもアブダクションが行われる。

あるいは、一緒に活動しているプロジェクトのメンバーが行っている行為がどのような意味をもっているのかを、コラボレーション・パターンを用いて理解するということがあるとしよう。ここでも、パターンによって、その行為の理由を推論することができる。

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