Creative Reading:『形の発見』(内田義彦)

2014.12.27 Saturday 21:53
井庭 崇


内田義彦 著の『形の発見』を読んだ。もともとはずいぶん昔に出版された本だが、改訂新版が出たということで1年ほど前に書店に並んでいるのを見つけた。

この本のなかに収録されている 丸山眞男 × 木下順二 × 内田義彦の鼎談は、僕にとって、思いがけず刺激的であった。

伝統芸能について語り合っているなかで、 内田が次のように語る。

芸を掘り下げていく。すると、そのなかでこそ―――内容分析ではなく、形の掘り下げという操作のつみ重ねのなかで、まさに形の発見という形で表現すべき中身に到達するという。この場合、何を表現するか、中身の問題は外されて―――あるいは議論の外に置かれているわけね。形から自然に内容がという形になっている、言葉通りとると。……形式をひたすら追求することで内容が自然に出る(そのように形を追求する)といういい方、あるいはやり方ね。……形をやってるうちに自然に、という言い方をすることに含まれている意味を思い切りふくらませて理解する必要があるんじゃないか。ヨーロッパでも達人の場合は、やっていくうちに内容が自然に出てくるなんていう。そこのところが強調されている。


そして、そこから社会科学における文体の重要性について、話が展開している。

【丸山】… 文語のよさはやはりリズムだよね。ぼくが文体がなくなっちゃったと感じるのは、あのリズム感だね。 …
【内田】… 社会科学でも同じと思うんだな。いま、ことばのリズムの問題が出てきたけれども、思考それ自体のリズムの問題もあるよね。
【丸山】それと不可分なんだな。
【内田】不可分なんだ。たとえば正確ということばとはちょっと違ったもので、的確ということばがあると思うんですよ。的確かどうかは、リズムの問題を抜いてはいえない。文体のリズムの問題でもあるし、現実にある事物を把え表現しようとする思考者のリズムの問題として。 …

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