Creative Reading:『形の発見』(内田義彦)

2014.12.27 Saturday 21:53
井庭 崇


・・・
【内田】ぼくは、社会科学でもそういうリズムのある表現様式をとらなければ人に伝わらないと思う。人に伝わらないだけでなくて、自分を納得させるというか、ほんとうに自分をことばで納得させることは不可能だからね。
【丸山】「ほんとうは」そうなんだ。しかしそれは例外だな。そういうふうに考えているほうが(笑)。社会科学をやっている連中で、だいたい文体のことなんか考えている奴はいないんじゃないか(笑)。
【内田】しかし文体のことを考えないと、ほんとうにはものはつかまえられない。ものそれ自体がつかまらないよ、つかまえたもの―――内容ーーーをどう表現するかなどと考える以前に。形を与え得たかぎりで理解しうる。
(p.82-85)


そしてしばらくして、社会科学の本を書くときのプロセスの話として、この話がふたたび登場する。


【内田】…たとえば、ぼくは章立てを最初にやって、このための参考資料は何で……というやり方が苦手なんですよ。ばあっと書いてしまってから、全然新しく書き直すという作業をくりかえすというやり方でね。…
・・・
【内田】…いちばん言いたいことは何か、ということになると、さあ、それが循環というか、書きなおしの作業のなかで、ああこれであったなという形できまる。内容があらかじめきまっていて表現を、というわけではない。…そういう形ーーー一定の形式をもった表現を手中にする努力のなかでしかつかめない内容というのがぼくらの方でもあるのじゃあないか。われわれの仕事でも、思想に関するかぎり、あらかじめ内容があって、それを表現を抜きにして語っても、無意味とまでは言わないけれども、いちばん奥底のところはつかめない、ということがある気がするんだけれどね。

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