Creative Reading:『探求の共同体』(マシュー・リップマン)

2014.12.30 Tuesday 00:28
井庭 崇



もちろん、このことは、方法について考えたり反省したりすることを否定しているわけではない。「方法」というものは万能ではないので、その限界や副作用について考えることは重要なことである。しかも、「方法」は固定的ではなく、絶えずつくり直される。実践のなかで「方法」がつくり直されていく。そのようなことも、方法を受け入れているからこそできるのであって、方法を受け入れなければ何も始まらない。

重要なのは、自分が採用している「方法」に自覚的になることである。「暫定的に受け入れている」ことを心のどこかに置いておき、実践しているときも、その方法をどのようにしたらよりよく実践できるのかを考えることが大切である。

さらに、リップマンは創造的思考について、次のようにも語っている。この点も、パターン・ランゲージとの関係を考えると実に興味深い。

創造的思考にとって重要なのは、経験と想像力が相互に浸透し合うことではないかと私は考えている。経験との結びつきなしには、想像力は簡単に見当違いの方向にいってしまうし、想像力との結びつきなしには、経験は容易に退屈で、平凡なものになる。しかし、両者がメタファーやアナロジーという形で結びつく場合には、思いがけない幅で存在している新たな可能性の扉を開けることができる。(p.81)


ここで指摘されている「経験」と「想像力」という区分と関係づけでいくならば、パターン・ランゲージは「想像力」の側の支援をする。パターン・ランゲージを「経験」の代替と捉える人がいるが、それは間違いである。パターン・ランゲージは経験の代わりはできない。ただし、自分にその経験がないことを知り、それがどのような経験でありそうかを想像できるという意味で、それは「想像力」の側に位置している。

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