Creative Reading:『探求の共同体』(マシュー・リップマン)

2014.12.30 Tuesday 00:28
井庭 崇



ただし、興味深いのは、その想像力の側に位置するパターン・ランゲージは、(自分ではなく)他者の「経験」に基づいている。「経験との結びつきなしには、想像力は簡単に見当違いの方向にいってしまう」のであるが、パターン・ランゲージは(他者の)「経験」とは結びついているから、想像力が見当違いの方向にいってしまうことを防ぐ。例えば、よいコラボレーションを経験した人の経験がパターン・ランゲージになっていれば、それを知ることでよいコラボレーションとはどういうことかの想像が、少なくとも誰かがどこかで実践しているようなものの範囲でイメージできるようになる。

そして、パターン・ランゲージは「想像力との結びつきなしには、経験は容易に退屈で、平凡なものになる」ことにも関係する。パターン・ランゲージ ――― 例えば、ラーニング・パターンやコラボレーション・パターン ――― を用いた対話ワークショップをすると、みんな、これまでほとんど注目してこなかった自分の経験が、実は他の人には経験されていない貴重な経験であることを知る、ということがある。自分にとって当たり前の経験が、実は、よい学びやよいコラボレーションに結びついているんだということを感じる。パターン・ランゲージにはそういう効果もある。

しかも、パターン・ランゲージは「経験」と「想像力」を論理でしっかりと結び付けるわけではない。まさに「メタファーやアナロジーという形で結びつく」ように、両者をつなぐ。それゆえ、「思いがけない幅で存在している新たな可能性の扉を開ける」ことを可能とするのである。

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