Creative Reading:『ナチュラル・ナビゲーション』(T・グーリー)

2015.01.07 Wednesday 09:23
井庭 崇


昨年、書店でたまたま見つけた本がとても素敵で、素晴らしい出会いとなった。そこに書いてあることが魅力的なだけでなく、僕がパターン・ランゲージについて感じていたことや、しっかり語っていかなければならないと感じていたことを、見事に言語化してくれていた。

image[NaturalNavi.jpg]『ナチュラル・ナビゲーション:道具を使わずに旅をする方法』(トリスタン・グーリー, 紀伊國屋書店, 2013)image[]

Tristan Gooley, The Natural Navigator: The Art of Reading Nature’s Own Signposts, Virgin Books, 2010/2014


道具を使わずに、自然を感じ、そこに潜む意味を読んで旅をする。それがナチュラル・ナビゲーションであり、そうやって旅をする人をナチュラル・ナビゲーターという。

本書の多くの部分が、具体的に太陽や夜空、植物や地形の読み方に費やされているのだが、僕は特にプロローグから始まる冒頭部分にすごく共感し、とても気に入った。

著者は、ナチュラル・ナビゲーションに対して、単なる実践的な手段ということを超える意味を見出している。自然と関わり、自然を味わうためのものだと捉えているのだ。「ナチュラル・ナビゲーションの技能は、絶滅の危機にあるのに加え、現代社会でははなはだしく誤解されていることに気づいた」という。

かつては人々にとって生きていくための実践的な道具だったとしても、いまこの技能を現代にも通じる芸術的技法だと考える者は見当たらない。しかしそれこそが私の考えだった。ナチュラル・ナビゲーションは、芸術として扱われたときに最も美しく、力強く輝きを放つ ――― 人間の根源的な能力であって、単なる歴史のひとこまだとか、サバイバル知識と片付けていいものではない。


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