Creative Reading:『ナチュラル・ナビゲーション』(T・グーリー)

2015.01.07 Wednesday 09:23
井庭 崇


ここで「芸術」と書かれているが、おそらく「art」のことであり「技芸」と訳してよいだろう。

「ナチュラル・ナビゲーションが陥りがちなのは、サバイバル技術と同一視されることだ」と言い、「サバイバルテクニックとして自然事象を使って方位を定める方法からは、本来ナチュラル・ナビゲーションが持っている豊かな魅力のほとんどがそぎおとされてしまっている」。

そうではなく、ナチュラル・ナビゲーションはもっと豊かなものなのだ。著者は自らの経験を振り返りこう言う。

旅のなかでわたしが一番熱くなれるのは、つながっているという感覚、自分を取り巻く世界との触れ合いの部分だった

旅を続ける自分を取り巻く自然を理解すること、わたしの未来はむしろそのほうにあった。

「方角を知る方法が、いくつかの『コツ』という形で教えられることもあるが、自然の事象を使ってお手軽に方位を割り出そうとすると、自然との確かな絆を感じる機会を失う恐れがある。方位を知ることと、方位を解ることとは微妙に異なるーーー自然界を深く理解せずとも、自然の事物を手がかりにものの数秒で方位を見つけだすことは可能なのだ。方位を解るためには、自分たちが移動している世界を根源から理解しなければならない。自然の事象を利用して方位を導き出そうとする目的が、自分の経験を深めることであるなら、方法を駆使するよりも、その方法がなぜ使えるのかを理解する方が重要だ。それがサバイバル・ナビゲーションとナチュラル・ナビゲーションのそもそもの違いなのである。」


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