声、神話、地下水脈:谷川俊太郎・覚和歌子『対詩 2馬力』を読んで

2018.02.28 Wednesday 13:33
井庭 崇


谷川俊太郎さんと覚和歌子さんの『対詩 2馬力』は、お二人の「対詩」でつくった詩と対談が収録されている本。覚(かく)さんは、『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」の作詞をされた方ですね。

「対詩」についての話も面白かったが、それ以外のところで僕にとって重要なところがいろいろあった。まず最初は、覚さんが声から入っているということについて聞かれての発言。

「『一期一会』感覚というか、『そのとき声出してしまったものがすべて』みたいなことと、もう一つは『言葉において、声のほうが文字よりもえらい』と確実に思っていますね。」(覚, p.30)

「文字は『意味』に近いけれども、声は意味を超えて『波動』そのものだということですね。波動のほうがより真実で、リアリティがある。」(覚, p.30)

そうそう、そうなのだ。だからこそ、僕は、パターンの中に事例の文章を入れず、その代わりに対話ワークショップやパターン・カードを用いた対話のようなかたちで、声で自らの経験を語り、それを聞く、ということを重視してきた。パターンの記述だけで伝達のための自己充足的なコンテンツとするのではなく、あえて「スキマをつくる」ことで、語り=声が引き出されるようにつくってきた。

そして、これからのチャレンジは、パターンそのものの内容を声でどう共有していくか。パターン・ソングというのは、その試みの最初のものだし、ラジオやポッドキャストのようなものでの共有なども試してみたいと思っている。いまでも僕らは、パターン・ランゲージをつくり込むときには、視覚的な文字面だけでなく、音として発したり聴いたときにもわかるようになることを気にして、パターン名を考えている。そういうことが発揮される音声的な共有手段についても、もっと模索していきたいと思っている。

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