声、神話、地下水脈:谷川俊太郎・覚和歌子『対詩 2馬力』を読んで

2018.02.28 Wednesday 13:33
井庭 崇



「僕なんかはやっぱりそういう集合的無意識にできるだけ根をおろしたいというか、届きたいという気持ちがどこかにありますね。」(谷川, p.46)

この地下水脈のメタファーは、井戸と地下という言葉で語る村上春樹さんの話にも通じるし、河合隼雄さんの「個を突き抜けての普遍」という話にもつながる。

まさに、僕がパターンを洗練させて、仕上げるときに、ぐっと深く潜り込んで探るのも、この多くの人の奥深いところに通じる地下水脈である。


最後に、覚さんが言っていたすごく素敵な執筆スタイルの箇所を。

「私は、基本、詩は八ヶ岳のアトリエでしか書かない、と決めて、すごく試作が楽しくなりました。やっぱり自然の中には「お助け小人」がいるんですよ。そういう話をこの間、画家の友人としていたら、彼も『絶対いる』って言ってましたね。自然の中で書くのは、楽しい。エッセイとか散文は東京でも書けるんですけど、詩は山で書くほうが楽しいですね。」(覚, p. 51)

素敵すぎる、そのスタイル。世界の作家たちも、丘の上のヒュッテ(小屋)みたいなところをもっていて、そこにこもって書く、というような人は多い。僕もそういう特別な場所を持ちたいなぁ。実に。


『対詩 2馬力』(谷川俊太郎,? 覚 和歌子, ナナロク社, 2017)

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