自ら「つくる」ことで経済から離れる「卒 資本主義」への創造社会ヴィジョン

2020.12.04 Friday 14:08
井庭 崇



このような状態から脱するにはどうしたらよいのだろう? そのような「卒 資本主義」の可能性を考えてみたい。ここで、「卒 資本主義」というのは、「脱 資本主義」と似ているが、少しニュアンスの異なる言葉として提唱したい。この「卒」で表すということは、『クリエイティブ・ラーニング:創造社会の学びと教育』のなかで、鈴木寛さんが「脱近代」ではなく「卒近代」という言葉をつかっていたのに着想を得ている。学校を「卒業」するように、「リスペクトをもちつつ、そこから離れ、次の段階にいく」というニュアンスが「卒」にはある。資本主義が可能にしてくれた恩恵や時期を否定せず認めつつも、そこから離れていくという意味で、「卒 資本主義」。あるいは、もっと身近なレベルの感覚で言うならば、「卒 経済依存」「卒 お金依存」と言ってもよいだろう。

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さて、「卒 資本主義」はどのように可能になるのだろうか? その鍵は、実はこれまで僕らが語って目指していたことにこそあった、と最近気づいた。それは、「つくる」ということへのフォーカスである。僕はこれからの社会は、「創造社会」(creative society)と呼び得る社会になると考え、そのことについてここ10年ほど言い続けてきた。その社会では、人々は自らの日常的な創造性を発揮しながら、いろいろなものを「つくる」。「つくっている」ということが生活や人生の豊さの象徴になるような時代だ。この「つくる」ということが、「卒 経済依存」、「卒 お金依存」、そして「卒 資本主義」を可能とする鍵なのだ。

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