自ら「つくる」ことで経済から離れる「卒 資本主義」への創造社会ヴィジョン

2020.12.04 Friday 14:08
井庭 崇



これらのことは、現在の時点から見ると、難しそうに聴こえるかもしれない。自分に野菜を育てられるだろうか、あるいは服をつくれるだろうか、と。しかし、それが簡単にできるようになり、多くの人がやるようになる社会が、創造社会なのだ。1990年代の初めのまだインターネットが普及していない段階で、ネット上でお金を振り込むことができたり、ネット経由でテレビを見ることができたり、オンラインで授業ができるということは、難しいことだと思っただろう。それと同じように、なんでも自分でつくることができる世界というのは、いまの段階では、信じにくいかもしれない。しかし、FAB(デジタル・ファブリケーション)の技術や装置も開発されていて、かなりの度合いで可能になっている。太陽光パネルなどの自然エネルギー装置により自分たちのところでつくることができる。そして、それぞれの領域における創造実践の経験則を言語化したパターン・ランゲージも、日々の「つくる」の下支えをしてくれる。

そのような「つくる」ことへのシフトは、単につくる喜びやそれに付随する学びを得られるだけではなく、「卒 経済依存」「卒 資本主義」の道を進むことなのだ、と最近気づいた。自分で「つくる」暮らし・生き方をすることで、経済システムから離れることが可能になる。これが、創造社会の姿であろう。人は、自ら「つくる」ことで、経済システムから自由になることができるのである。

もちろん、経済がまったく不要になるということではない。完全自給自足にこだわってしまうと、それはそれで不自由になるし、経済によって成り立つよいこともいろいろある。その価値を認めた上で、経済から適度な距離をもって関わることができるようにすることを目指すのが、「卒 資本主義」への創造社会ヴィジョンである。

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