2021年春学期 井庭研「ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて」シラバス

2021.01.27 Wednesday 17:07
井庭 崇



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また、学問のあり方も「ナチュラルでクリエイティブ」なかたちに変わっていくことになります。すでに上でも取り上げた哲学者ミシェル・セールは、農業に関わる人口の減少について触れた文脈のなかで、次のように語っています。「作家であれ哲学者であれ社会学者であれ、今世紀初頭にはほとんど万人が農業を直接に体験していたのに、現在では誰もそんな体験をしていない。すなわち二〇世紀最大の問題、最重要の事件は、思想のモデルとしての農業の消失だとさえ言えると思います」。これは非常に興味深い指摘です。これからの学問は、物事を分解して分析する機械論的なアプローチや「工業的な製造」型の設計・制御の思想にもとづくものではなく、生命的な複雑さをまるごとつかみ、それを育てていくような「農業的な育成」型の学問になるのではないかと僕は考えています --- それがどういうことなのかは、正直まだはっきりとはわかりませんが。

井庭研では「新しい学問」をつくるんだという話は、そういうことに興味が湧く人にとっては、その挑戦・議論に参加できるという魅力があると思いますが、必ずしも学生メンバーの一人ひとりに求めるものではありません。それでも、これから取り組む研究が、そのようなワクワクする知的な冒険の一部であるということを「なんだか、面白そう!」と思ってくれる人を歓迎します。

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