2021年春学期 井庭研「ナチュラルにクリエイティブに生きる未来に向けて」シラバス

2021.01.27 Wednesday 17:07
井庭 崇



「創造社会」に重なる未来ヴィジョンを早くから描き伝えてきたダニエル・ピンクは、ロジカルで分析的な「情報化」の時代に対して、これからの時代は、創作力や共感、喜び、意義というものが、より重要になってくると指摘しています。まず、「パターンやチャンスを見出す能力、芸術的で感情面に訴える美を生み出す能力、人を納得させる話のできる能力、一見ばらばらな概念を組み合わせて何か新しい構想や概念を生み出す能力」が発揮される機会が増え、求められるようになります(ダニエル・ピンク『ハイコンセプト:「新しいこと」を考え出す人の時代』)。そして、「他人と共感する能力、人間関係の機微を感じ取る能力、自らに喜びを見出し、また、他の人々が喜びを見つける手助けをする能力、そしてごく日常的な出来事についてもその目的や意義を追求する能力」も重要になると言います。

このように、一人ひとりが、自分の自然な創造性を発揮する「創造社会」では、このような力とセンス(感性)を磨いていく必要があり、それらをうまく発揮することそのための教育・支援が重要となります。さらに、一人ひとりが創造性を発揮するとともに、チームでのコラボレーションや、より広い他者との連鎖・増幅を通じて共創していくことができれば、自分たちで自分たちの社会をアップデートしていく「自己革新的な社会」になるでしょう。そうなれば、現在、すでに限界が感じられているような「一部の人が考え、それを承認して受け入れるだけの民主主義」から、誰もがその具体的なアイデア生成に寄与することで社会を形成していく「創造的民主主義」(クリエイティブ・デモクラシー:Creative Democracy)の世界へとシフトしていくでしょう。

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