「べき乗分布」のインプリケーション (『歴史の方程式』, マーク・ブキャナン)
2008.04.22 Tuesday 22:05
井庭 崇
image[Book-Buchanan.jpg]image[]今週のインターリアリティプロジェクトの輪読では、『歴史の方程式』image[]の前半を読んだ。
この本は、「べき乗分布」に関する研究の歴史を振り返り、「非平衡物理学」(nonequilibrium physics)―――著者の言葉でいうと「歴史物理学」(historical physics)―――の考え方を紹介してくれる、とても刺激的で重要な本だ。ここまで「べき乗分布」の研究について詳しく書いてくれている本は他にはない。
今日は、この本のなかから僕が特に面白いと思う部分を紹介することにしたい。
■べき乗分布にはスケール不変性がある → 「典型的」「一般的」な出来事はない。
凍ったジャガイモを壁や床に叩きつけると砕け散るが、そのとき様々なサイズの破片ができる。粉々になった小さな破片は非常に多く、大きな塊は少ないだろう。ここで、この破片の大きさと数を詳しく調べてみると、実は規則正しいということがわかってくる。「重ささが二倍になるごとに、破片の数は約六分の一になっていく」(p.59)というのだ。これは、数学的にいうならば、「べき乗分布」になっているということだ。
「べき乗分布」には、スケール不変的(scale-invariant)な性質がある。つまり、どのスケール(尺度)で拡大してみても、同じような状況が見えるのである。このことをわかりやすくいうと、次のようになる。
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