「べき乗分布」のインプリケーション (『歴史の方程式』, マーク・ブキャナン)
2008.04.22 Tuesday 22:05
井庭 崇
「今あなたが、好きなように自分の体の大きさを変えられる存在だったとしよう。・・・どんな大きさでもまわりの景色はまったく同じに見えるので、もし自分を何回縮めたか忘れてしまうと、まわりを見ただけでは自分の大きさがまったく分からなくなってしまうのである。これが、冪乗則の意味するところである。破片の山は必ず、「スケール不変性」や自己相似性と呼ばれる特別な性質をもっているからである。破片が広がった様子はどの大きさにおいても同じに見え、まるで各部分が全体の縮小像であるかのように見えるということだ。」(p.61)
つまり、どのスケールで見ても、同じような秩序が見うけられるということだ。バラバシたちが、リンク数の順位分布がべき乗分布になるネットワークを「スケールフリー・ネットワーク」と呼んだのは、このためだ。
image[LinearGraph-Ave200.jpg]べき乗分布においては、「典型的な」もしくは「一般的な」サイズというものは存在しない。あらゆるスケールのものが同じようなかたちで存在するからである。正規分布では重要な指標であった「平均」や「分散」というものが意味をなさなくなる。というのは、平均をとると、テールに引っ張られて平均値は限りなく小さくなってしまう。また、分散を調べると、ヘッドの値とテールの値にかなりの差があるため、かぎりなく大きな分散値になってしまう。このように、平均や分散という指標は、正規分布でなければ意味をなさないのだ。そのため、対象の分布が正規分布なのかべき乗分布なのかということはとても重要なことになる。
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