「顕在的機能」と「潜在的機能」 (機能分析とは何か? 前編)

2008.04.24 Thursday 15:18
井庭 崇


社会学者ニクラス・ルーマンは、自らの拠って立つ「方法」を「機能分析」(functional analysis)だとしている。主著の『社会システム理論』のなかでも、「機能的方法は、結局のところある種の比較の方法なのであり、現実へそれをあてはめることは、現存しているものの別様のあり方の可能性を考慮して現存しているものを把握することに役立つのである」(Luhmann, 1984:p.84)として、機能分析の説明に多くのページを割いている。「機能分析」とは、もともと文化人類学で生まれ、その後、社会学において精緻化されていった方法であり、一種の理論技術だ。機能分析の基本的な考え方は、物事の「構造」ではなく、「機能」に着目して分析を行うというもの。

僕は、クリストファー・アレグザンダーのパターン・ランゲージも、複雑系科学で行われるモデリング・シミュレーションも、「まぼろしのコンセプト」の話も、根底の部分では、この機能分析とつながりがあると考えている。それがどのようなつながりなのかを説明するために、まずは「機能分析とは何か?」について解説しておくことにしたい。


ここでは、社会学における機能分析の整理を行ったロバート・マートン(Robert Merton, 1910?2003)の話から始めることにしよう。

かつてマートンは、「機能分析は、社会学的解釈の諸問題を扱う現代の研究方針のなかで、もっとも有望である反面、おそらくもっとも系統立って整理されていない」(Merton, 1964: p.16) として、手法としての機能分析の要件を整理した。マートンの主張のなかで最も示唆的だったのは、機能分析によって「顕在的機能」だけでなく、「潜在的機能」について理解することが重要だという点だ。

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