量子力学における「コト」的世界観と、オートポイエーシス

2008.07.08 Tuesday 23:55
井庭 崇



image[Book-Takeuchi.jpg]image[]ここではまず、『世界が変わる現代物理学』image[](竹内 薫, ちくま新書, 2004)の方について書くことにしたい。

『世界が変わる現代物理学』では、相対性理論や量子力学の簡単な解説とともに、現代物理学がもつ「思想」が論じられている。この本が刺激的なのは、単なる解説本を超え、その「思想」について論じているためである。


量子力学について少しだけ解説しておくと、「量子」とは、世界を構成する超ミクロな存在であり、電子や光子などのことである。量子は、「粒子」の性質とともに「波」の性質も併せ持っている。しかも、古典力学(ニュートン力学)が想定するような「確定性」ではなく、「不確定性」がその根本原理に含まれている。このような「粒子と波の二重性」や「不確定性」という特徴が、古典力学的な感覚に慣れ切っている僕たちにとって、量子力学の考え方を理解しがたいものにしているといってよい。

しかし、翻ってみると、この慣れ切っている古典力学の感覚こそが、ひとつのパラダイムにすぎないということを示しており、量子力学のパラダイムで捉えれば、世界はまったく違ったふうに見えてくるのだ。そう考えると、物理学的な細かい点を抜きにしても、そのパラダイムがもつ思想性に注目し、それを理解して感覚をつかむことが、重要だといえる。『世界が変わる現代物理学』は、まさにその点を追求している本である。

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